産業医が解説する「低下したモチベーションを組織がどう支えるべきか」
正月休みが明けると、社員の中に「仕事に戻る気持ちが切り替えられない」「なんとなくやる気が起きない」といった状態が見られることは珍しくありません。年末年始の長期休暇は生活リズムが変化しやすく、心身の負担も大きくなりがちです。企業としてこの時期のモチベーション低下をどう捉え、どのようにケアするべきかは、組織の生産性や定着率に直結する重要なポイントです。
本記事では、産業医という専門的な立場から、正月休み明けにやる気が出ない社員への正しい対応を詳しく解説します。特に、メンタルヘルス不調の早期発見やコミュニケーションの方法、人事・管理職が実施できる具体策など、実務に役立つ情報を網羅しています。
目次
正月休み明けにやる気が出ない理由
社員のモチベーションが低下する背景には、いくつか共通した要因があります。原因を的確に把握することで、適切な対応を取ることができます。
生活リズムの乱れ
年末年始は睡眠時間が不規則になりやすく、家族行事による疲労も蓄積しがちです。休暇明けは体内時計が元に戻っておらず、脳がパフォーマンスを発揮しにくい状態になっています。これは医学的にも自然な反応であり、多くの場合は数日から1週間で改善します。
仕事への心理的ハードル
長期休暇の後は「休みが楽しかった」「仕事モードに戻りたくない」という感情が生じやすく、特にプレッシャーの強い職務や繁忙期を控えている場合、復帰への抵抗が強くなりやすい傾向があります。
年末の疲労が残っている
年末は業務が立て込みやすく、残業が増えていた社員の場合、疲労が回復しきれないまま休暇を終えている可能性があります。この場合、休み明けに倦怠感や集中力低下が顕著に現れることがあります。
メンタルヘルス不調の初期サイン
やる気の低下が長期化する場合、適応障害やうつ症状など、メンタルヘルス不調の初期段階である可能性があります。単なる休み明けの「だるさ」と見分けがつきにくいため、管理職が注意して観察する必要があります。
組織が取るべき基本姿勢
正月休み明けのモチベーション低下に対して、企業が持つべき基本姿勢は「無理に効率を求めない」「コミュニケーション量を増やす」「健康状態の変化に注意する」の三点です。
いきなり高いパフォーマンスを求めない
休み明け直後は全社員のパフォーマンスが一時的に低下しやすいことを前提に、業務の優先順位を整理し、徐々にアクセルを踏める環境を整えることが重要です。
コミュニケーションのハードルを下げる
業務報告だけでなく、気軽に相談しやすい雰囲気づくりが重要です。特にオンライン勤務の社員は孤立しやすいため、意識的な声がけが必要になります。
心身の変化に敏感になる
管理職は、「遅刻や欠勤が増えた」「表情が暗い」「ミスが増えた」といったサインに早期に気づけるようにすることが求められます。これはメンタルヘルス対応の基本であり、休み明けは特に注意すべきタイミングです。
管理職が実施すべき具体的な対応
ここからは、現場で即実践できる具体策を紹介します。
休み明けの面談・声がけを行う
短い面談でも、社員の状態を把握するうえで効果的です。ポイントは以下の通りです。
- 仕事の進捗よりもコンディションを確認する
- 休み中の過ごし方に触れ、会話のきっかけを作る
- 心身の調子について軽く尋ねる
- 今週の業務量が適切かすり合わせる
「無理しなくて大丈夫」「困っていることがあれば早めに言ってほしい」というメッセージを伝えることで、社員の安心感につながります。
業務の負荷調整
休み明けの最初の数日は、以下のような配慮を検討します。
- 緊急案件を分散する
- 重い判断を必要とする業務を後ろ倒しする
- チームでタスク共有し、負荷を偏らせない
負荷を適切に調整することで、不調の深刻化を防ぐことができます。
生活リズムを整えるサポート
産業医面談や社内研修で、生活リズムの整え方を啓発することも有効です。
- 睡眠時間を一定にする
- 朝の光を浴びる
- 休憩を適度に入れる
こうした基本的なセルフケアは、休み明けのコンディションを大きく左右します。
メンタルヘルス不調を疑うべきポイント
以下の状態が2週間以上続く場合、専門的な対応が必要な可能性があります。
- 強い倦怠感が続いている
- 明らかに意欲が出ない
- 表情や言動が明らかに変化している
- 出勤が辛そうに見える
- ミスが日常的に発生している
こうしたサインを見逃さず、産業医や人事と連携してサポート体制を整えましょう。
人事・経営層ができる組織的な支援策
正月休み明けの不調が組織全体で起きている場合は、会社としての仕組み改善が必要です。
年末の繁忙期の見直し
年末に過度な残業が発生し、その疲労が翌年に持ち越されているケースは非常に多いです。業務を前倒ししたり人員配置を改善することで、長期的な生産性向上につながります。
休暇明けのオンボーディング設計
仕事に戻りやすい環境を整えるために、以下のような制度が有効です。
- 休み明けの初日は会議を少なめにする
- 情報共有の仕組みを整える
- 個人の裁量で仕事量を調整できる仕組みを作る
社員がスムーズに職場復帰できるほど、パフォーマンスも回復しやすくなります。
産業医や外部専門家との連携強化
定期的に産業医面談を活用したり、メンタルヘルス研修を実施することで、組織全体の健康リテラシーが向上します。産業医は「不調の早期発見」「健康経営のアドバイス」「休職復帰のサポート」など、多角的に組織を支えることができます。
やる気が出ない社員へのNG対応
適切なサポートのためには、避けるべき対応も理解しておく必要があります。
根性論や叱責
「やる気を出せ」「休んだんだから頑張れるはず」
こうした言葉は問題を悪化させるだけでなく、社員の信頼を損なう原因になります。
放置する
初期のサインを見逃すと、不調が深刻化し、休職や退職につながるリスクがあります。ちょっとした変化を見逃さず、声をかけることが重要です。
いきなり業務量を増やす
業務負荷が高まるほど、モチベーション低下は悪化します。最初は軽めのタスクから始め、徐々に通常業務に戻すことが推奨されます。
まとめ
正月休み明けの「やる気が出ない」という状態は、多くの社員に見られる自然な反応です。しかし、その背景には休養不足やメンタルヘルス不調の初期段階が隠れている可能性もあります。企業として最も大切なのは、社員を責めるのではなく、心身の状態を丁寧に観察し、適切なサポートを提供する姿勢です。
管理職のこまめな声がけ、業務負荷の調整、生活リズムの整え方の啓発、産業医との連携といった具体的な対策を組み合わせることで、社員の健康と生産性を両立する組織づくりが実現できます。
正月明けは、企業が社員への配慮を示せる重要なタイミングです。この機会に改めて、職場のメンタルヘルス施策を見直してみてはいかがでしょうか。
株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス
弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
- 2021年8月 エターナルフィット西町南 開業
- 2022年11月 エターナルフィット厚別 開業
- 2024年7月 エターナルフィット円山 開業
- 救急科専門医
- 産業衛生専攻医
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医
- 脳血管内治療専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 産業医
- 労働衛生コンサルタント
- 健康経営エキスパートアドバイザー
- 健康運動指導士
- 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)
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