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インフルエンザ流行期における産業保健の視点からの対応ガイド

インフルエンザ

現在、季節性の インフルエンザが流行の兆しを示しており、企業においても従業員の健康管理・休業対応・職場感染予防の観点から、産業保健サービスを提供される皆さまにとって重要な時期となっています。今回は、インフルエンザの基礎知識から、予防・早期対応、そして最新の治療薬の位置づけまで、産業保健の観点を交えて整理します。社内での保健・衛生管理を実施されている方の参考としてご活用ください。

インフルエンザとは何か、なぜ流行するのか

インフルエンザウイルスは、主に冬期に流行する呼吸器感染症です。感染すると突然の高熱、頭痛、全身倦怠感、関節・筋肉痛、喉の痛み、そして咳・鼻水といった症状が出ることが多く、重症化すると肺炎・中耳炎・脳症などを引き起こすリスクがあります。

流行の背景

  • インフルエンザウイルスは、上気道(喉・鼻腔)や下気道の粘膜から侵入・増殖します。
  • 冬場は空気が乾燥・冷えるため、ウイルスが粘膜から侵入しやすく、また室内で人が密になる機会が増えるため、職場・学校・家庭での感染拡大が起こりやすくなります。
  • 感染力が高く、発症前後でもウイルスを排出して他者に感染させる可能性があります。

産業保健の観点からの注意点

  • 従業員が発症・休業すると、業務が滞るリスクがあります。
  • 職場での二次感染を防ぐため、発症者・接触者の迅速な対応が必要です。
  • 高齢者、持病を有する社員などでは重症化リスクが高いため、早期の対応・保健管理が重要です。

予防対策の基本

インフルエンザを完全に防ぐことは難しいですが、発症リスク・重症化・職場での二次感染を減らすための基本的な対策があります。これらは治療薬を使用する以前に必須です。

ワクチン接種

厚生労働省によれば、季節性インフルエンザワクチンの接種は、特に高齢者や基礎疾患をもつ60〜64歳の方に推奨されています。また、2025/26シーズンに向けてワクチン接種の重要性が改めて強調されています。
産業保健サービスを提供する立場では、次のような取り組みが考えられます:

  • 職場での社員へのワクチン接種推奨・案内を行う。
  • 接種の時期(流行直前期)を見据えて、社内通知・予約の支援を検討。
  • 高リスク群社員(高齢、心肺疾患、糖尿病など)には優先的な接種を促す。

日常の感染対策

ワクチン接種と並んで重要なのが、日常の感染対策です。

  • 帰社・外出からの「手洗い・うがい」習慣の徹底。
  • 咳・くしゃみ時のマスク着用や咳エチケット。
  • 会議室・休憩室など共用スペースの定期的な換気・加湿(乾燥環境を避ける)。
  • 発熱・咳などの症状がある従業員には、出社せず在宅勤務・休養を促すポリシー整備。
  • 社員同士に感染が広がらないよう、発症者が出たら濃厚接触者の把握・対応を行う。

職場としての備え

  • 発症者が出た場合の対応フロー(保健師・産業医・人事との連携)を明確化。
  • 休業規定・在宅勤務の活用を社内で周知。
  • 重症化リスクの高い社員のフォロー体制(相談窓口・医療受診案内)を整備。
  • 社員へのインフルエンザの基礎知識・対策の啓発(例えば社内掲示・メール配信)を行う。

インフルエンザ発症時の対応

もし従業員がインフルエンザを発症した場合、速やかな対応が重要です。特に産業保健サービスとしては、以下の点に留意してください。

受診・診断

インフルエンザは、発熱・全身症状とともに突然発症することが多く、迅速診断キットが広く使われています。
抗インフルエンザ薬の効果を最大に発揮するためには、発症後 48時間以内 の治療開始が目安とされています。
産業保健担当者としては、従業員に「発熱・咳などの症状が出たら早めに医療機関を受診する」よう啓発することが望ましいです。

出社停止・休養

発症した社員はウイルスを排出し、他者に感染させる可能性があるため、発症直後から出社を控え休養するよう指導してください。

学校では発症日を0日目とカウントして少なくても5日間は欠席をしなければなりません。企業においても一般的には学校のルールに準じるところが多く、1週間前後の休みをとる必要があります。
また、「解熱=治癒」と誤解されることがありますが、発熱が下がっていてもウイルスの排出は続く可能性があるため、完全な復帰判断には慎重が必要です。

感染拡大防止措置

職場内で発症者が出た場合、以下の措置が有効です

  • 発症者が出た部署・フロアの換気・消毒強化。
  • 濃厚接触と思われる社員の把握・対応(例えば自宅観察や休業)を産業保健と人事が連携して行う。
  • 社内メール・掲示等で注意喚起(手洗い・うがい・マスク着用など)を速やかに実施。
  • 高リスク社員(免疫低下・高齢・基礎疾患)には個別フォローを。

治療薬について

インフルエンザに罹患した場合、抗インフルエンザ薬が用いられます。ここでは、代表的な2剤であるイナビル/ゾフルーザを中心に、その特徴・使用上の注意点を整理します。

抗インフルエンザ薬

  • 内服薬:タミフル(オセルタミビル)など。
  • 吸入薬:イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル)・リレンザ(ザナミビル)
  • 新規内服薬:ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)

イナビル(吸入型)

  • イナビルは吸入タイプの抗インフルエンザ薬で、1回の吸入で済むものです。   
  • 年齢・体重により用量が異なり、10歳未満では1吸入1回、10歳以上では2吸入1回という処方例があります。
  • 吸入操作が必要なため、高齢者・小児・吸入が難しい方では適用が難しいことがあります。                                   
  • 吸入後に正しく薬剤が届いていないと、効果が十分でない可能性があります。
  • また、気管支喘息・慢性肺疾患のある方は、吸入時に咳込んだり吸入操作が困難になることもあるため注意が必要です。

 ②ゾフルーザ(内服型・1回投与)

  • ゾフルーザは、2018年3月に国内で発売された比較的新しい抗インフルエンザ薬です。
  • 特徴は、通常「1回の内服」で治療が完結する点です。
  • 作用機序が従来の薬とは異なり、ウイルスの「mRNA合成」を阻害するキャップ依存的エンドヌクレアーゼ阻害薬に分類されます。
  • 臨床試験では、従来薬に比べてウイルス排出が速かったという報告があります。                             
  • 利便性は高いものの、処方の可否・適用対象・コスト・耐性リスクを総合的に判断する必要があります。

治療薬選択のポイント

  • 発症から48時間以内に適切な治療薬を開始することで、症状の軽減・他者への感染を減らす可能性が高まります。
  • 吸入薬(イナビル等)は操作が難しい場合があるため、その点を考慮して医師から処方されます。
  • 内服薬(ゾフルーザ等)は操作が不要で利便性が高いですが、「耐性リスク」「適用年齢」などの条件があります。
  • 重症化リスクがある従業員(高齢者・基礎疾患あり)は、早期受診・治療開始を企業として促すことが望ましいです。
  • 治療薬を使用しても、ウイルス排出がすぐに無くなるわけではないため、復職の判断は慎重に。社内の復帰基準を設けておくことが有効です。
  • 社員への薬剤の内容説明(どのような薬があるか/どのようなメリット・注意点があるか)を簡便に案内しておくことで、受診・治療の促進につながります。

職場での復帰・業務継続対応

発症・治療・休養が終了した後、社員がどのように職場復帰・業務に戻るかという観点も、産業保健サービスとして重要なテーマです。以下は考慮すべきポイントです。

  • 出社再開要件の設定:例えば「解熱して48時間以上経過している」「その他の症状(咳・倦怠感)が軽減して業務に支障ない」などを明記。
  • 復帰前の健康観察:軽度残る症状(咳・だるさ)を抱えている社員が無理をして復帰すると、再発・二次感染のリスクがあります。
  • 無理な勤務を抑制:流行期には体力消耗・ストレス増もあり、発症後すぐに通常勤務に戻るのではなく、段階的な復帰(例えばフレックス/時短勤務)を検討。
  • 職場内フォロー:発症者が出た部署にはフォロー体制を整え、同僚の健康管理や感染防止策の徹底を行う。
  • 情報共有:社内掲示・メール等で「インフルエンザ流行期の注意点」「発症時の対応フロー」「治療薬の概要」などを提供し、社員が自ら行動できるように促す。

まとめ

インフルエンザ流行期にあたって、産業保健サービスを提供される立場から押さえておきたいポイントを整理しました。

  • ワクチン接種・日常の感染対策(手洗い・マスク・換気)がまず重要。
  • 発症した際には早期受診・適切な治療の開始が効果的。
  • 治療薬として、イナビル(吸入型・1回吸入)・ゾフルーザ(内服型・1回服用)という選択肢があり、それぞれ特徴・注意点があります。
  • 職場においては、休養・復帰ルール・二次感染防止策・社員への情報提供をあらかじめ整備しておくことが、有効な産業保健対応となります。

企業・事業所の保健担当者として、インフルエンザ流行期に備え、社員の健康維持・職場の安全・業務継続を支えるための仕組みづくりをぜひご検討ください!

株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平
野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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