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ストレスチェックの結果を経営層にどう伝える?産業医が解説するレポート作成の5つのコツ

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス状態を可視化し、組織の課題を把握する重要なツールです。しかし、ストレスチェックの結果をどのように経営層に伝えるかによって、その後の施策の実効性が大きく左右されます。特に、健康経営の推進や離職防止、生産性向上を目指す企業にとって、レポートの質は重要な経営判断材料となります。

本記事では、産業医の視点から、経営層にストレスチェック結果を効果的に伝えるためのレポート作成のポイントを解説します。視覚的なわかりやすさ、配慮すべき倫理的要素、そして経営層が重視する情報の伝え方まで、実践的な内容を詳しくご紹介します。

経営層へのストレスチェック報告が重要な理由

経営層にストレスチェック結果を報告する目的は、単に「情報共有」することではありません。組織の健全性を保ち、持続可能な成長を支えるための重要な意思決定材料として活用されるべきです。

たとえば、ストレスの高い職場環境が続けば、生産性の低下や休職・離職のリスクが高まります。特に昨今では「健康経営」への関心が高まり、経済産業省が推進する健康経営銘柄ホワイト500などを目指す企業にとって、ストレスチェック結果は評価指標の一つにもなります。

また、ストレスチェックの結果を踏まえた改善行動が適切に取られることで、従業員の満足度やエンゲージメント向上にもつながり、中長期的には企業の競争力を高める効果もあります。

経営層が知りたい5つの分析ポイント

経営層は、現場の細かな心理状況ではなく、組織レベルの傾向や経営リスクに関心を持っています。以下の5つの観点を意識して、レポートを構成すると良いでしょう。

①高ストレス者の割合と前年との比較

・数値でトレンドを示す
・前年比での改善・悪化の方向性を明記
・全社平均との乖離がある部門を特定

②部署別・属性別のストレス傾向

・部署別、年代別、性別などのクロス集計
・特定の層に偏りがないかを確認
・業務負荷が集中している職種の可視化

③主なストレス要因の特定

・「仕事の量・質」「対人関係」「裁量の自由度」「評価の納得感」などの項目ごとに分析
・従業員の声を活用(自由記述の分析結果をまとめる)

④組織としてのリスク評価

・改善が急務な部門の明示
・人事施策やマネジメント改善の必要性を示唆
・健康課題が生産性や離職率に与える影響を推定

⑤推奨される対策とその効果予測

・具体的な施策(研修、1on1強化、管理職の教育など)
・過去の実施例とその効果(数値で示せればベター)

説得力のあるレポート作成の工夫

経営層は忙しく、限られた時間で意思決定を迫られます。そのため、レポートは簡潔かつ視覚的に理解しやすくまとめることが重要です。

ストレスチェックを外部EAP機関などに委託する場合、個人分析だけではなく集団分析を行うことが一般的です。そのため、集団分析の結果を要点をまとめて伝えることが大前提です。しかし外部機関は社内の事情がわからないため、総務/人事担当者が集団分析の結果を踏まえて、社内でできる改善策を考える必要があります。優秀な産業医を契約している企業の場合は、産業医に相談して考えてみましょう!

以下に説得力のあるプレゼンを作るための方法を載せてみました

■ グラフやチャートの活用

・棒グラフや円グラフで部署ごとの比較
・前年との変化を折れ線グラフで可視化
・リスクマトリクスで課題部門を明示

■ 平易な言葉で説明する

・専門用語や医療用語は極力避ける
・例:「プレゼンティーイズム」→「出勤はしているが本来の力を発揮できていない状態」

■ サマリーの配置と構成

・レポート冒頭に「エグゼクティブサマリー」を1ページで記載
・詳細なデータは後半に回し、全体像→詳細の流れにする
・本文中にはキーメッセージや提案を強調

倫理的配慮と個人情報の守り方

ストレスチェックの結果はセンシティブな情報を含みます。そのため、データの匿名性と倫理的配慮は最重要ポイントです。

■ 個人が特定されないようにする

・5人未満の属性別集計は避ける(厚労省ガイドライン参照)
・必要に応じて集計単位を部署ではなく、事業所単位にする

■ レポートの開示範囲を明確に

・閲覧可能な範囲(経営層、人事、産業医)を限定
・不必要な社内共有を避ける

■ 従業員へのフィードバックも忘れずに

・従業員にも全体結果のフィードバックを行うことで透明性を保つ
・「何のために実施されたのか」「結果がどう活かされるのか」を共有

産業医のアドバイスを経営層に活かす方法

産業医は、組織の健康課題を医療的・心理的観点からアドバイスできる専門家です。ストレスチェックの集計結果を基に、産業医から以下のような提案を添えると、経営層のアクションにつながりやすくなります。

■ 改善提案の具体例

・ラインケア研修の実施(管理職の気づき力向上)
・業務量調整と優先順位づけの見直し
・外部EAPサービスやカウンセリングの導入

■ 医学的見解の提示

・高ストレス状態が続くことの健康リスク
・組織風土がメンタル不調に与える影響など

産業医としてのコメントがレポートに加わることで、経営層の信頼感も高まり、社内施策の推進力となります。

まとめ

ストレスチェックの結果報告は、単なる事務作業ではなく、「組織の健康」を経営戦略に組み込むための重要なステップです。経営層が正しく現状を把握し、具体的な改善アクションを取るためには、的確で配慮あるレポート作成が不可欠です。

レポートはわかりやすく、論理的で、経営判断を後押しする内容にすることが求められます。さらに、産業医としての視点を活かした提案が加わることで、レポートの説得力が高まり、経営層の理解と行動を促す大きな武器となるでしょう。

株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平
野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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