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過労死と労災認定の裁判事例|労働者の権利と企業の責任

弁護士

「知り合いのところで過労死があった」

「うちの会社は当たり前のように毎月80時間の時間外労働をやっている」

「友人に相談したら、労基に伝えたほうが良いといわれた」

仕事をすることは生きていくために必要なことであり、人生を豊かにする行動でもあります。しかし、過労による自殺、重大な病気になってしまうことは本末転倒であり、絶対に避けなければなりません。電通、NHKの過労死の裁判は有名ですが、過労や労災は皆さんの身近なところで起こっています。

本記事は「過労死と労災認定の裁判事例|判例から学ぶ労働者の権利と企業の責任」をテーマに作成しました。ぜひ最後までご覧ください!

過労死とは?労災認定のポイントを解説

過労死とは、長時間労働や過度な業務負担により心身が極度に疲弊し、脳・心臓疾患や精神疾患を引き起こし、死亡に至るケースを指します。日本では特に社会問題となっており、多くの裁判例が存在します。

過労死が労災として認定されるには、以下のような要素が考慮されます。

  • 労働時間の長さ(発症前1か月の残業時間が100時間超、または2~6か月平均で月80時間超が目安)
  • 業務の負荷やストレス要因(ノルマ・ハラスメントの有無、突発的な業務負担増加など)
  • 医学的な因果関係(労働環境と死亡の直接的関係性)

これらの条件を満たすことで、労働基準監督署による 労災認定 が行われる可能性があります。

過労死について詳しく知りたい方は厚生労働省 「しごとより、いのち。」を参考にしてください

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/karoushizero/index.html

過労死に関する労災認定の基準と法律の仕組み

労災認定の基本基準

厚生労働省は、過労死の原因として主に 脳・心臓疾患と精神障害による自殺を挙げ、それぞれに具体的な基準を定めています。

■ 脳・心臓疾患による過労死の認定基準

過労によって脳梗塞や心筋梗塞などが引き起こされた場合、以下の基準が適用されます。

  • 発症前1か月の残業時間が100時間を超える場合
  • 発症前2~6か月の平均残業時間が月80時間を超える場合

この基準は、長時間労働が血圧の上昇やストレスの蓄積を招き、心血管系疾患のリスクを高めることが科学的に証明されているために設定されています。

■ 精神障害による自殺(過労自殺)の認定基準

精神的ストレスが原因で自殺に至った場合、以下のような労働環境があったかどうかが評価されます。

  • 長時間労働の継続(過重労働による極度の疲労と精神的負担)
  • 上司や同僚からのパワーハラスメント(暴言、過度な叱責、無視など)
  • 業務内容の極端な変更や負荷の急増(短期間で大きな責任を負わされるケースなど)

これらの条件を満たす場合、労災認定が行われる可能性が高まります。

労災申請と法的対応

労災認定を受けるためには、労働者やその遺族が労働基準監督署に対して労災申請を行う必要があります。しかし、申請が認められるまでの過程は複雑で、証拠の提出や詳細な調査が求められることが多いため、専門家(弁護士や労働問題に詳しい社労士など)の支援を受けることが推奨されます。

また、労災申請が認められなかった場合でも、裁判を通じて企業の責任を追及し、補償を求めることが可能です。実際に、過去の判例では長時間労働やパワハラが原因で過労死した事例において、企業側に損害賠償責任が認められたケースもあります。

過労死の裁判事例|実際の判決から学ぶケーススタディ

過労死の裁判例として、有名な事例を3つ紹介します。

電通過労自殺事件(2015年)

概要: 新入社員が長時間労働とパワハラにより精神的に追い詰められ、自殺。裁判で電通の責任が認められ、労災が認定された。
判決: 企業に対し 1億円超の損害賠償 を命じる。

NHK記者の過労死(2013年)

概要: NHKの女性記者が過労により心不全で死亡。月159時間の残業が原因とされた。
判決: 労災認定。長時間労働を放置した企業の責任が問われた。

物流業の男性社員の過労死(2020年)

概要: 運送会社のドライバーが1日15時間以上の労働を強いられ、脳出血で死亡。
判決: 会社側に安全配慮義務違反が認められ、遺族への補償が確定。

裁判で争う際のポイントと企業・労働者の対応策

過労死を巡る裁判で企業側の責任を問うためには、次のポイントが重要です。

  • 労働時間の証拠収集(タイムカード・メール履歴・業務記録)
  • 医師の診断書の提出(過労と健康被害の因果関係を証明)
  • 同僚や関係者の証言(職場環境やハラスメントの実態を証明)

また、企業側が防止策として取り組むべき点は、以下の通りです。

  • 残業時間の適正管理(36協定の厳守)
  • ハラスメント対策の強化
  • 労働者の健康診断の徹底

過労死を防ぐために|労働環境改善と法的対策

過労死を防ぐために、個人・企業・社会全体で取り組むべき課題があります。

(1) 労働者ができること

  • 長時間労働を避けるため、労働基準監督署へ相談
  • 無理な業務を断る勇気を持つ

(2) 企業ができること

  • 適切な労働時間管理(勤務シフトの見直し)
  • メンタルヘルスサポートの導入

(3) 国や社会ができること

  • 厳格な労働時間規制の実施
  • 過労死を防ぐ法改正の推進

まとめ

過労死は、長時間労働や職場のストレスが引き金となり発生する深刻な問題です。裁判例からも、企業の責任が問われるケースが多く、労働者の権利を守るためには 労災申請や法的手段を活用 することが重要です。

また、社会全体で 労働環境の改善 に取り組み、企業と労働者双方が適切な働き方を実践することが、過労死の防止につながります。

【産業医について】

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平

野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

【各種資格】

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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