除雪作業は社会インフラを維持するために不可欠な業務です。一方で、大雪が続く冬季には、短期間に集中して長時間労働が発生しやすいという特徴があります。
特に、月100時間を超える残業が発生した場合、企業としては過労死リスクへの対応や産業医面談の実施義務を適切に理解しておく必要があります。
本記事では、
- 除雪作業がなぜ過労リスクを高めやすいのか
- 月100時間超の残業が意味する法的・医学的リスク
- 産業医面談が必要となる基準と実際の流れ
- 企業が今すぐ取るべき実務対応
について、現役産業医の視点からわかりやすく解説します。
目次
北海道の大雪と除雪作業による長時間労働の現実
北海道では、毎年のように記録的な大雪が発生します。
道路、駐車場、構内の安全を守るため、除雪作業は社会インフラを支える極めて重要な仕事です。
一方で、大雪=突発的・集中的な長時間労働になりやすいのも事実です。
- 深夜・早朝からの除雪対応
- 天候次第で終了時刻が読めない
- 連日の出勤、休日返上
- 寒冷環境下での重労働
これらが重なることで、月の時間外労働が100時間を超えるケースは、北海道では決して珍しくありません。
月100時間以上の長時間労働が意味するもの、なぜ「100時間」が危険ラインなのか
医学的・労働衛生学的に、月100時間以上の時間外労働は、脳・心臓疾患(いわゆる過労死ライン)のリスクが急激に高まる水準とされています。
特に以下の疾患リスクが上昇します。
- 脳出血・脳梗塞
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 重症不整脈
- 突然死
除雪作業は
「寒冷」「肉体労働」「睡眠不足」「精神的緊張」
という、循環器系にとって最悪に近い条件がそろいます。
除雪作業が特に危険な理由
現役産業医として、冬季に以下のような訴えを多く聞きます。
- 「胸が締め付けられる感じがする」
- 「動悸が続く」
- 「頭がぼーっとする」
- 「夜に眠れない」
- 「血圧が一気に上がった」
寒冷刺激は血管を収縮させ、血圧を急上昇させます。
そこに過重労働・睡眠不足・ストレスが加わることで、発症の引き金が引かれるのです。
月100時間超で「産業医面談」が義務になる理由
産業医面談は「努力義務」ではなく「義務」である
月100時間以上の時間外・休日労働を行った労働者に対しては、
産業医による面接指導が義務付けられています。ただの医師ではなく産業医資格が必要になります。
これは「やったほうがよい」ではなく、事業者の義務です。
理由は明確で、放置すれば、重大疾病や労災につながるリスクが極めて高いから。
企業が面談を行わなかった場合のリスク
産業医面談を適切に実施しなかった場合、次のような問題が起こります。
- 労働基準監督署からの是正勧告
- 過労死・過労自殺が発生した場合の企業責任
- 安全配慮義務違反
- 企業イメージの失墜
「忙しいから後回し」は、最も危険な判断です。
産業医面談までの具体的な流れ
ここからは、現役産業医として実際に行っている流れをわかりやすく解説します。
① 月100時間超の対象者を把握する
まずは、
- タイムカード
- 勤怠システム
などを用いて、時間外労働が100時間を超えた労働者を正確に把握します。
この時点で、
「本人が大丈夫と言っているかどうか」は関係ありません。
② 対象者へ産業医面談の案内を行う
対象者には、以下を明確に伝えます。
- 法律に基づく産業医面談であること
- 体調確認と予防が目的であること
- 不利益取扱いは一切ないこと
除雪作業後の労働者は、
「面談=叱責・評価」と誤解しているケースが非常に多いため、
丁寧な説明が重要です。
③ 産業医による面談(ここが最重要)
面談では、以下を重点的に確認します。
身体面
- 血圧
- 動悸、胸痛、息切れ
- めまい、頭痛
生活・睡眠
- 睡眠時間
- 中途覚醒
- 食事状況
精神面
- 強い不安や抑うつ
- 判断力・集中力の低下
除雪作業の場合、「我慢強い」「責任感が強い」方ほど危険です。
④ 産業医からの意見書提出
面談後、産業医は事業者へ意見書を提出します。
- 業務負荷の軽減
- 深夜・早朝作業の一時制限
- 休養の確保
- 医療機関受診の勧奨
これは指示ではなく医学的意見ですが、
事業者はこれを踏まえた対応が求められます。
⑤ 就業上の配慮・フォロー
重要なのは、
面談して終わりにしないこと。
- 一時的なシフト調整
- 除雪体制の見直し
- 複数人での作業体制
など、現実的な対策を行うことで、 次の大雪への備えになります。
除雪作業が多い企業こそ「事前対策」が重要
北海道では、
「雪が降ってから考える」では遅いケースが多々あります。
- 冬季前の健康診断結果の確認
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症の把握
- 除雪要員の分散化
- 産業医との事前相談
これらを行うことで、
大雪=重大事故を防ぐことができます。
産業医として伝えたいこと
1か月の間に集中して雪が降ると、急に時間外労働が増えます。作業量が多くなるだけではなく、本来休日のはずが出勤しなければならず、どんどん時間外労働が増え、疲労が蓄積します。
作業員の方は住民のために夜中から作業するため、使命感が強く、また重機を使用するため、作業中のミスが人命や大きな損害に直結します。
いままで多くの作業員の産業医面接を行いましたが、本人は大丈夫と言っていても健康問題を抱えている方が医療機関受診を勧めるケースが多いのが現状です。
時間外労働が100時間を超えた場合、事業者の方は労働者に対して、産業医面談を受けれるように準備しなければいけないことを忘れないでください!
まとめ~除雪の長時間労働は「仕方ない」で終わらせない~
- 北海道の除雪作業は社会的に不可欠
- しかし月100時間超は明確な危険信号
- 産業医面談は命を守るための制度
- 正しい流れで実施すれば、企業も労働者も守られる
「誰も倒れなかったから大丈夫」ではなく、「倒れない仕組みを作る」ことが、これからの企業には求められます。
株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス
弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
- 2021年8月 エターナルフィット西町南 開業
- 2022年11月 エターナルフィット厚別 開業
- 2024年7月 エターナルフィット円山 開業
- 救急科専門医
- 産業衛生専攻医
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医
- 脳血管内治療専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 産業医
- 労働衛生コンサルタント
- 健康経営エキスパートアドバイザー
- 健康運動指導士
- 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)
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