正しい健康管理ができていれば、80歳を超えるまではよほどのことがない限りは脳卒中にはなりません。しかし、未治療の生活習慣病を放置したり、暴飲暴食を繰り返す、独身男性など様々な要因により、働く世代の方も脳卒中になってしまうケースがいまだに多いです。今回は「脳卒中のリハビリと復職のポイント」をテーマに記事を作成しました。後遺症が残るケースが多く、脳卒中に詳しい産業医がポイントを解説します。ぜひ最後までご覧ください!
目次
脳卒中とは?原因と症状の基礎知識
脳卒中(脳血管障害)は、脳の血流が途絶えることで発生する病気で、大きく「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類に分けられます。
- 脳梗塞(全体の約70%):動脈硬化や血栓による血管閉塞
- 脳出血(約20%):高血圧が原因の脳内出血
- くも膜下出血(約10%):脳動脈瘤破裂による出血
主な症状
- 片麻痺(体の片側が動かしづらい)
- 構音障害(ろれつが回らない)
- 感覚障害(しびれや異常感覚)
- 視野障害(半分見えないなど)
- 認知機能障害(記憶や注意力の低下)
発症後のリハビリは時間との勝負です。早期に適切な対応をすることで、回復の可能性が高まります。
脳卒中後のリハビリ:開始時期と重要性
リハビリの開始時期
ガイドラインでは「超急性期(発症直後)」からのリハビリ開始が推奨されています。
- 急性期(発症直後〜数週間):病院での基本的なリハビリ(寝たきり予防・拘縮防止)
- 回復期(1〜6ヶ月):本格的なリハビリで運動機能や言語能力の回復を目指す
- 維持期(6ヶ月以降):自宅や施設での継続的なリハビリ
早期リハビリのメリット
✔ 廃用症候群(筋力低下や関節拘縮)の予防
✔ 脳の可塑性(神経のつながりの再構築)を促進
✔ 生活機能の回復と社会復帰の可能性を高める
リハビリの種類と具体的なトレーニング
① 運動療法(リハビリの基本)
- 関節可動域訓練(ストレッチや軽い運動で拘縮予防)
- 筋力強化トレーニング(麻痺側の筋力回復をサポート)
- 歩行訓練(杖や装具を使ったバランス改善)
② 作業療法(生活動作の改善)
- 食事や着替えの練習
- 日常動作(トイレや入浴など)の訓練
- 利き手交換や補助具の活用
③ 言語療法(コミュニケーション支援)
- 発話・構音訓練(口や舌の運動)
- 失語症訓練(言葉の理解・表出のリハビリ)
④ 認知リハビリ(高次脳機能障害の対策)
- 記憶訓練(メモを活用)
- 注意力トレーニング(パズルや簡単なゲーム)
職場復帰のためのリハビリと準備
復職に向けたポイント
- 主治医・リハビリスタッフと相談し、復職のタイミングを見極める
- 職場とコミュニケーションをとり、業務調整を依頼する
- 脳卒中に強い産業医と面談を行い、「復職支援プログラム」を作成する
- 復職支援プログラムに従って、復職する
脳卒中になった従業員の主治医はおそらく脳神経外科医か神経内科が担当すると思います。脳卒中を専門にしてますが、経験の豊かな産業医ではないので、業務内容、ストレス、企業の想いなどを全く想像できないため、的確なアドバイスを行うことはできません。数は少ないですが、経験のある産業医に「産業医面談」「復職支援プログラムの作成」をお願いしましょう!
復職前の準備
・体力回復:軽い運動を習慣化し、疲労耐性を高める
・ 認知機能の確認:集中力や判断力の回復を確認する
・ストレス管理:心理的な負担を軽減する方法を学ぶ
再発予防と長期的な健康管理のポイント
脳卒中の再発率は5年以内で約30%と高く、継続的な健康管理が重要です。
再発予防の基本
・血圧管理(塩分制限・適度な運動)
・ 食生活の改善(野菜・魚を中心とした食事)
・ 禁煙・節酒(タバコは厳禁、アルコールは適量)
・適度な運動(ウォーキングやストレッチ)
服薬の継続
脳卒中は再発しやすい病気のため、日々の管理や通院が重要となります。多くの方は総合病院から内科の開業医へ紹介となります。良い開業医にあたれば、人生のパートナーとして健康管理を委ねたら良いと思います。しかし血圧が高くて降圧薬を飲んでいるのに血圧手帳もみない、コレステロールが高いのにガイドラインに基づいた調整をしない、など多くの開業医の対応に絶望することも多々あります。もし、治療に納得がいかなければセカンドオピニオンをしましょう!一生の健康管理をしてもらうので、早期の切り替えを検討しましょう!
まとめ ~脳卒中のリハビリと復職の成功のために~
- 早期リハビリ開始が回復のカギ
- 運動・作業・言語・認知リハビリをバランスよく行う
- 復職には段階的な準備が必要
- 再発防止のために生活習慣を見直す
脳卒中後の生活は適切なリハビリと予防対策で大きく改善できます。焦らず、計画的にリハビリを進めていきましょう。
参考サイト 脳卒中治療ガイドライン2021[改定2023]https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf