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産業医選任届とは?その目的と法律上の義務
「産業医選任届」とは、一定規模の事業場において産業医を選任した際に、労働基準監督署に届け出るための書類です。労働安全衛生法第13条によって、事業者には労働者の健康管理や職場環境の安全確保のため、産業医を選任する法的義務が課されています。
産業医の主な役割は、以下のような業務です。
- 健康診断の実施と結果に基づく保健指導
- 過重労働者の面接指導
- 作業環境の点検や改善の助言
- 職場巡視(月1回以上)
このように、産業医の存在は労働者の健康を守るために不可欠な存在となっており、その選任が完了したら「選任届」を迅速に提出する必要があります。
提出が必要な事業所の基準とは?いつ、誰が提出するのか
産業医の選任が必要になるのは、以下の条件を満たす事業場です。
常時50人以上の労働者を使用する事業場
この「50人」は正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員なども含まれます。労働者数が常時50人を超えたタイミングで、遅滞なく産業医を選任し、選任届を提出しなければなりません。
衛生管理者についても選任届が必要になります。
提出者は誰?
選任届は原則として事業者が提出します。ただし、実務上は人事・労務部門の担当者が代行して提出するケースが一般的です。
提出期限は?
選任後、遅滞なく提出する必要があります。具体的な日数は法律上明確にはされていませんが、概ね選任から14日以内が目安とされています。
産業医選任届の書き方と提出方法(記入例付き)
選任届は、厚生労働省が公開している所定の様式を使用します。正式名称は「産業医選任報告書(様式第6号)」です。こちらからダウンロードできます
主な記入項目
- 事業場名および所在地
- 事業者名
- 産業医の氏名、住所、医師免許番号
- 選任年月日
- 業種や業務の概要
- 提出年月日
記入例(抜粋)
項目 | 記入例 |
産業医氏名 | 山田 太郎 |
免許証番号 | 第123456号 |
選任日 | 2025年3月1日 |
提出方法
提出先は、事業場を管轄する労働基準監督署です。提出方法は以下の3通りとなります。
- 『e-Gov電子申請』による申請
- 労働基準監督署の窓口への提出
- 労働基準監督署宛ての郵送
提出時の注意点とよくあるミス
産業医選任届の提出において、以下のようなミスがよく見られます。
よくあるミス
- 労働者数のカウントミス(パート・派遣社員の漏れ)
- 選任日と提出日のズレ
- 産業医の資格確認不足(産業医としての研修未受講など)
注意点
- 医師であれば誰でも良いわけではない:産業医の資格(研修修了など)を持っている必要があります。
- 選任理由が変更になった場合も再提出が必要:例えば、産業医が交代した場合や、法人名変更があった場合など。
産業医選任後のフォローアップと今後の対応
選任届を提出したらそれで終わり、ではありません。継続的な対応が求められます。
定期的な職場巡視の実施
- 月1回以上、産業医が職場を巡視し、健康管理上の課題を把握する必要があります。
健康診断の実施と助言
- 一般健康診断やストレスチェックの結果に基づいて、産業医が個別指導や職場改善提案を行います。
報告の記録・保存
- 選任届や産業医の指導記録は、5年間保存が義務付けられています(労働安全衛生法施行規則より)。
まとめ~産業医選任届は「労働者の健康を守る第一歩」~
産業医の選任とその届出は、企業が健全な職場づくりを目指すうえで欠かせないプロセスです。労働者数が50人を超えた時点で、速やかに産業医を選任し、正しい手続きで選任届を提出することが求められます。
提出書類の記入ミスや、資格確認の不備は行政指導の対象にもなりかねないため、十分な注意が必要です。今後は、電子申請への対応やDX化の流れも予想されるため、定期的な法改正情報のチェックも欠かせません。
「産業医選任届」は単なる義務ではなく、社員の健康を守る第一歩として、企業の社会的責任の一部でもあります。しっかりと理解し、確実な対応を心がけましょう。