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違反すると倒産の危機に?!労災が起きたら企業が負う4つの責任

はじめに

企業にとって労働災害(労災)は決して他人事ではありません。万が一労災が発生した場合、企業はさまざまな責任を負うことになり、対応を誤ると倒産の危機に陥る可能性もあります。本記事では、労災が発生した際に企業が負う「4つの責任」について詳しく解説します。

企業(事業者)が負う4つの責任とは

「刑事的責任」「民事的責任」「行政的責任」「社会的責任」を指します。これらの責任は労災の内容や程度、社内の体制などで大きく変わってきます。一つずつ説明しますので、特に企業の経営者、人事/総務部門の責任者は最後まで読んでいただき、正しい産業医の選任をしていただければ幸いです

刑事的責任

刑事的責任とは?

労災が発生し、企業や経営者が労働安全衛生法などの法令に違反していた場合、刑事罰が科される可能性があります。労働者の命や健康を守る義務を怠ると、経営者個人も処罰対象となることがあります。

刑事的責任とは、国家が企業や経営者の違反行為を罰するものであり、罰金刑だけでなく、場合によっては懲役刑が科されることもあります。これは企業の存続に直接影響を及ぼす可能性があるため、経営者や管理職は特に注意が必要です。

企業が負う可能性のある刑事的責任

労働安全衛生法違反

労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医の選任が義務付けられています。この義務を怠ると、企業や経営者が法的責任を問われる可能性があります。具体的な違反行為としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 産業医の選任義務を怠る(一定規模以上の事業場:労働安全衛生法第13条より)
  • 適切な安全管理体制を整えていない。
  • 労働者への安全教育を行っていない。
  • 労働災害防止のための措置を怠った結果、事故が発生した。

これらの違反があった場合、企業だけでなく経営者や安全管理責任者も刑事責任を問われる可能性があります。

業務上過失致死傷罪

労災事故が発生し、企業側の安全管理の不備が原因で労働者が死亡または重傷を負った場合、「業務上過失致死傷罪」に問われることがあります。この罪に問われた場合、企業の経営者や現場責任者に対して罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。

例えば、

  • 高所作業中の安全対策が不十分だった結果、労働者が転落し死亡した。
  • 過重労働を強いられた結果、従業員が過労死した。
  • 化学物質の管理がずさんで、従業員が中毒を起こした。

といったケースでは、企業や経営者が刑事責任を問われる可能性が高くなります。

労働基準法違反

労働基準法は、労働時間や賃金、休憩時間などに関する最低限の基準を定めた法律です。労働基準法違反が原因で労災が発生した場合、企業は刑事罰の対象となります。具体的には、

  • 長時間労働を強要し、従業員が健康を害した。
  • 深夜労働や休日労働の規定を守らなかった。
  • 労働災害発生後に適切な報告を怠った。

これらの違反があると、企業に対して罰金刑が科されるだけでなく、管理責任者も処罰の対象となります。

刑事的責任を回避するためには?

刑事的責任を回避するためには、以下の対策を徹底することが重要です。

  1. 労働環境の整備と安全対策の徹底
    • 産業医を適切に選任し、健康管理を徹底する。
    • 労働者に対して安全教育を定期的に実施する。
    • 労働災害防止のためのリスクアセスメントを行う。
  2. 労働安全衛生マネジメントシステムの導入
    • 労働安全衛生法に基づく社内ルールを明確にする。
    • 定期的な内部監査を実施し、安全管理体制の見直しを行う。
    • 事故発生時の対応マニュアルを整備し、緊急対応の訓練を実施する。
  3. 労働基準監督署との連携強化
    • 労働基準監督署の指導を遵守し、適切な対応を行う。
    • 労働災害が発生した場合、速やかに報告し適切な措置を講じる。
  4. コンプライアンス意識の向上
    • 経営者および管理職向けのコンプライアンス研修を定期的に実施する。
    • 労働者が違反を指摘しやすい内部通報制度を設ける。
    • 安全配慮義務の徹底を社内文化として根付かせる。

刑事的責任を問われると、企業の存続に関わる重大な問題となります。適切な安全管理を行い、労働者の健康と安全を確保することで、労災の発生を防ぎ、企業の社会的信用を守ることができます。

民事的責任

民事的責任とは?

労災によって労働者やその家族が損害を被った場合、企業は損害賠償責任を負うことになります。特に「安全配慮義務違反」が問われるケースが多く、企業が適切な対策を取っていなかった場合、裁判で多額の賠償を命じられることもあります。

企業が負う可能性のある民事的責任

1. 安全配慮義務違反

企業には、労働者が安全で健康的な環境で働けるようにする「安全配慮義務」があります。これは労働契約法に基づくもので、企業がこれを怠ると損害賠償責任を問われる可能性があります。例えば、

  • 労働者に対して適切な安全対策を講じなかった。
  • 防護具の支給や作業環境の整備を怠った。
  • 過重労働を放置し、健康被害が発生した。

これらのケースでは、企業の不作為が原因で事故や健康被害が発生し、労働者やその家族から損害賠償請求を受ける可能性があります。

2. 慰謝料・逸失利益の賠償

労災により労働者が負傷したり死亡した場合、その精神的苦痛に対する慰謝料や、事故によって失われた将来の収入(逸失利益)についての賠償が発生します。

  • 労働者が障害を負った場合、障害の程度に応じた補償を求められる。
  • 死亡事故の場合、遺族からの慰謝料請求が発生する。
  • 労働不能となった場合、将来的な収入減少分の補償を求められる。

過去の判例では、数千万円から億単位の賠償金が企業に課されるケースもあり、財務状況に深刻な影響を及ぼすことがあります。

3. 企業の賠償リスクと判例

日本の裁判において、労災に関連する民事責任が問われた事例は多数存在します。例えば、

  • 過労死訴訟:長時間労働を強要し、労働者が過労死したケースでは、企業に対して数千万円規模の賠償が命じられた例があります。
  • 工場内事故:作業中の安全管理を怠ったことで重傷を負った労働者に対し、企業が責任を問われたケースも少なくありません。

これらの事例を踏まえると、企業は労災リスクを適切に管理しなければ、巨額の賠償責任を負う可能性があることが分かります。

民事的責任を回避するためには?

企業が民事的責任を回避するためには、以下の対策を徹底することが重要です。

  1. 安全管理体制の強化
    • 労働環境のリスクアセスメントを定期的に実施する。
    • 産業医や安全衛生委員会と連携し、職場の健康管理を徹底する。
    • 作業現場での安全対策を定期的に見直し、改善する。
  2. 労働者の健康管理の徹底
    • 定期健康診断を実施し、健康状態を把握する。
    • ストレスチェック制度を活用し、メンタルヘルス対策を強化する。
    • 労働時間の適正管理を行い、過重労働を防ぐ。
  3. 安全教育と意識向上
    • 労働者向けの安全教育を定期的に実施し、労働災害の予防意識を高める。
    • 過去の労災事例を共有し、同じ過ちを繰り返さないようにする。
    • ハラスメント対策を強化し、職場内の人間関係のトラブルを未然に防ぐ。
  4. 適切な労災補償制度の活用
    • 労災保険制度を最大限に活用し、労働者が迅速に補償を受けられるようにする。
    • 企業独自の福利厚生制度を整え、万が一の事故に備える。

行政的責任

行政的責任とは?

行政的責任とは、労災が発生した際に企業が労働基準監督署や行政機関から受ける罰則や指導のことを指します。労働安全衛生法や労働基準法に違反している場合、行政処分や業務停止命令などの厳しい措置が科されることがあります。特に重大な違反が発覚すると、企業の存続そのものが危うくなるケースもあります。

企業が負う可能性のある行政的責任

1. 労働安全衛生法違反の指導・勧告

労働災害が発生すると、労働基準監督署が調査を行い、法令違反があれば是正勧告や指導が行われます。具体的には、

  • 安全管理体制の不備に対する改善指導
  • 過重労働の是正措置の勧告
  • 労働者の健康管理不備に対する改善命令

これらの指導に従わない場合、より厳しい行政処分を受けることになります。

2. 業務停止命令・指名停止

重大な違反が認められた場合、企業に対して業務停止命令が下されることがあります。また、公共事業などに関わる企業は、行政機関からの「指名停止処分」を受ける可能性もあります。これにより、新規の契約を結ぶことができなくなり、事業運営に大きな支障をきたすことになります。

3. 企業名の公表

厚生労働省は、労働基準関係法令違反のうち、重大または悪質な違反について企業名を公表する制度を設けています。これに該当した企業は、公式に社名が公表され、社会的信用を大きく損なう可能性があります。

行政的責任を回避するためには?

企業が行政的責任を回避するためには、以下のような具体的な対策が求められます。

  1. 労働基準監督署の指導を遵守
    • 労働基準監督署からの指導や勧告に迅速に対応する。
    • 是正措置を適切に実施し、再発防止策を講じる。
  2. 労働安全衛生の社内体制強化
    • 労働安全衛生委員会を設置し、定期的な会議を開催する。
    • 産業医と連携し、労働者の健康管理を徹底する。
    • 労働災害のリスクアセスメントを実施し、安全対策を強化する。
  3. 労働時間管理の適正化
    • 過重労働を防ぐため、労働時間管理を厳格に行う。
    • タイムカードや勤怠管理システムを導入し、適正な労働時間を記録する。
  4. 社員教育と研修の実施
    • 労働安全衛生法に関する研修を定期的に実施する。
    • 労働者が危険を回避するための安全教育を徹底する。
  5. 適切な報告と対応
    • 労災が発生した際には、速やかに関係機関へ報告し、適切な対応を行う。
    • 労働者やその家族に対して、迅速かつ誠実な対応を行い、トラブルを未然に防ぐ。

社会的責任

社会的責任とは?

企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)とは、単に法律を守るだけではなく、労働者やその家族、さらには社会全体に対して責任ある行動を取ることを指します。労災が発生した場合、企業の対応次第では社会的信用を大きく損ね、企業の存続そのものが脅かされる可能性があります。

企業が負う可能性のある社会的責任

1. 企業の信用とブランドイメージの低下

労災事故が発生し、その対応が不適切だった場合、企業のブランドイメージが大きく傷つきます。特に、メディアやSNSを通じた拡散により、企業の対応が広く知れ渡り、消費者や取引先の信頼を失うことになります。

  • 労働者の安全を軽視している企業と認識される。
  • 事故が公になった場合、企業の評判が大幅に低下する。
  • 取引先や株主からの信頼を損ね、契約の打ち切りや投資の引き揚げが発生する可能性がある。

2. 従業員のモチベーションの低下と離職率の増加

労災が頻繁に発生する企業では、従業員が不安を感じ、モチベーションが低下します。これにより、

  • 優秀な人材の確保が難しくなる。
  • 既存の従業員が他社へ転職しやすくなる。
  • 従業員の士気が低下し、生産性が著しく落ちる。

結果として、企業の競争力が低下し、長期的な経営に悪影響を及ぼすことになります。

3. 社会的制裁のリスク

労災が発生した企業には、社会的な制裁が科されることがあります。特に、大手企業の場合、労働環境の問題が表面化すると、社会的な非難を浴びることになります。

  • 労働組合やNGOからの批判を受ける。
  • 消費者によるボイコット運動が起こる。
  • 行政からの監視が厳しくなり、規制が強化される可能性がある。

社会的責任を果たすためには?

企業が社会的責任を果たし、労災リスクを最小限に抑えるためには、以下の対策を実施することが求められます。

  1. 労働環境の改善と安全管理の徹底
    • 安全第一の職場環境を構築し、労働者の健康と安全を最優先にする。
    • 産業医や労働安全衛生担当者を適切に配置し、リスクマネジメントを強化する。
  2. 従業員との信頼関係の構築
    • 労働者と積極的にコミュニケーションをとり、安全に対する意識を高める。
    • 労働組合との連携を強化し、労働者の声を経営に反映させる。
  3. CSR活動の積極的な推進
    • 労働環境の改善に向けたCSR活動を推進し、社会貢献を意識した経営を行う。
    • 地域社会への貢献活動を実施し、企業としての信頼を確立する。
  4. 透明性のある情報開示
    • 労働環境の改善に関する取り組みを定期的に公表する。
    • 労災の発生状況やその対応策を明確に示し、企業の誠実な姿勢を社会にアピールする。

まとめ

企業経営において、「刑事的責任」「民事的責任」「行政的責任」「社会的責任」は、労災が発生した際に避けて通れない重要な責任です。特に産業医の選任や安全配慮義務の徹底は、労災を未然に防ぐために欠かせません。労働環境の改善と適切な安全管理を行い、企業の信頼を守ることが求められます。日常的に労働者を第一に考えた場合、法令順守や健康経営戦略は避けては通れないものなので、経験豊かな産業医、労働衛生コンサルタント、社会保険労務士などの専門家への相談が有用になります。ご検討のほどよろしくお願いいたします。


【産業医について】

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平 

【略歴】 
2013年旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得
その後、脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
2021年8月エターナルフィット西町南 開業
2022年11月エターナルフィット厚別 開業
2024年7月エターナルフィット円山 開業

 【各種資格】
・救急科専門医
・産業衛生専攻医
・脳神経外科専門医
・脳卒中専門医
・脳血管内治療専門医
・日本医師会認定健康スポーツ医
・産業医
・健康経営エキスパートアドバイザー
・健康運動指導士
・公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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