NEWSお知らせ

「運動しなさい」が逆効果になる理由

― 産業医の視点で考える、行動変容を阻む“正しさの押し付け” ―

はじめに

「健康のために運動しなさい」
この言葉は、職場の健康指導や面談、健診結果の説明など、さまざまな場面で使われています。一見すると医学的に正しく、本人のためを思ったアドバイスに聞こえるでしょう。しかし産業医として現場に関わっていると、この言葉がかえって行動を遠ざけてしまうケースを数多く目にします。

なぜ「運動しなさい」は逆効果になるのでしょうか。
本記事では、行動科学・心理学・産業保健の視点からその理由を整理し、企業の健康支援で本当に有効な伝え方について解説します。

運動の重要性は、すでに“知りすぎている”

多くの労働者は、運動不足が健康に悪影響を及ぼすことを理解しています。
メタボリックシンドローム、生活習慣病、メンタルヘルス不調、腰痛や肩こり――これらと運動不足の関連は、テレビやネットで繰り返し目にしてきました。

つまり問題は「知らないこと」ではありません。
それでも行動できない理由が、別のところにあるのです。

理由① 命令形は「心理的リアクタンス」を生む

人は「〜しなさい」「〜すべきだ」と指示されると、無意識に反発心を抱きます。
これは心理学で心理的リアクタンスと呼ばれる反応です。

特に職場では、

  • 上司
  • 産業医
  • 保健師
    といった“権威性のある立場”から言われることで、
    「やらされている」「管理されている」という感覚が強まります。

結果として、

  • 運動そのものが嫌になる
  • 健康指導を避ける
  • 面談時に本音を話さなくなる

といった逆効果が生じます。

理由② できていない自分を責めてしまう

「運動しなさい」という言葉は、裏を返せば
「あなたはできていない」
という評価にも聞こえます。

忙しい業務、長時間労働、育児や介護。
それでも時間を作れない自分に対し、

  • 自己否定
  • 罪悪感
  • 無力感

が積み重なっていきます。

この状態では、行動を起こすエネルギーはさらに低下し、
「どうせ自分は続かない」という思考に陥りやすくなります。

理由③ 運動のハードル設定が高すぎる

「運動」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、

  • ジムに通う
  • 30分以上のランニング
  • 週に数回の筋トレ

といった理想的だが負荷の高い行動です。

産業医面談で
「時間が取れなくて…」
という言葉が出る背景には、
最初から完璧を求めてしまっている構造があります。

理由④ 運動が“義務”になると継続できない

行動科学では、

  • 義務感
  • 外発的動機

による行動は、継続しにくいことが分かっています。

「やらなければいけない運動」は、

  • 楽しくない
  • 達成感がない
  • 生活に馴染まない

結果として、三日坊主で終わりやすくなります。

産業医が重視するのは「運動させる」ことではない

産業保健の目的は、従業員を理想的な生活に矯正することではありません。
その人の現実に合った、持続可能な選択肢を一緒に考えることです。

重要なのは、

  • 行動の主導権が本人にあること
  • 小さな成功体験を積めること

です。

逆効果を防ぐ、運動支援の伝え方

1. 命令ではなく「選択肢」を提示する

×「運動しなさい」
○「今の生活の中で、できそうな動きはありますか?」

2. 運動を“生活動作”まで分解する

  • エレベーターではなく階段を1階分だけ使う
  • 昼休みに3分立ち上がる
  • 通勤時に一駅分だけ歩く

これらも立派な身体活動です。

企業ができる環境整備の重要性

個人の努力に頼るだけでは限界があります。
企業側の支援として、

  • 立ち会議の導入
  • ストレッチ動画の社内共有
  • 休憩時間に使える軽運動コンテンツ

など、行動しやすい環境設計が不可欠です。

まとめ

「運動しなさい」が逆効果になるのは、

  • 命令が反発を生む
  • 自己否定を強める
  • ハードルが高すぎる
  • 義務感が継続を妨げる

といった理由があるからです。

産業医・企業が果たすべき役割は、
行動を強制することではなく、行動が自然に起こる土台を整えること
それが、結果として従業員の健康と生産性を高める近道になります。

株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平
野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

~お問い合わせ・資料請求について~
下記ボタンより、お問い合わせ・資料請求ができます。