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屋内作業でも油断禁物!工場・倉庫での熱中症対策とは

はじめに

夏が本格化し、外気温だけでなく、工場や倉庫といった屋内作業の現場でも熱中症リスクが高まっています。風通しの悪さ、機械の熱、保冷材や断熱材がない環境では、意外と気温・湿度が高くなるため注意が必要です。本記事では、産業医としての視点から、工場・倉庫で働く皆さまに向けた「屋内熱中症対策」をわかりやすく解説します。

工場・倉庫で熱中症が起こる原因

屋内は外より涼しいと思われがちですが、以下の理由で屋内熱中症リスクは軽視できません。

  1. 換気不足・通気不良
     屋根・壁に囲まれた空間では空気がこもり、熱気と湿気がたまります。
  2. 機械・設備の発熱
     フォークリフト・エアコンプレッサー・食品加工機器などが常時稼働しているため、局所的に高温になることも。
  3. 断熱材・保温材の影響
     冷房設備が未整備の場所では、保温材などが逆に熱を閉じ込めることもあります。
  4. 重労働・動きが多い作業
     積み下ろし、ピッキング、荷造りなど、肉体的な負荷が大きいため、体内に熱がこもりやすい。

屋内熱中症の主な症状

熱中症は段階的に進行します。初期には比較的軽微な症状ですが、重篤化すると命に関わることもあるため、早期察知が重要です。

  • 初期(Ⅰ度)
     めまい、倦怠感、頭痛、発汗異常(多汗・無汗)、吐き気
  • 中等度(Ⅱ度)
     嘔吐、筋肉こむら返り、大量の発汗、頻脈
  • 重症(Ⅲ度)
     意識障害、高体温(40℃前後)、痙攣、ショック状態

特に屋内では「発汗が見えにくい」「意識障害が誤認されやすい」という点に注意が必要です。

熱中症予防の4本柱

①環境整備:作業環境を改善する

  • 空調・扇風機・送風機の設置
     屋内でも定期的に換気し、新鮮な外気導入を心がけます。工業用扇風機・送風機を効果的に配置し、熱気の滞留を防ぎましょう。
  • 遮熱・断熱対策
     屋根・壁に遮熱フィルムや塗料を塗布し、熱の侵入を防ぎます。また、天井への断熱材設置も有効。
  • 局所冷却
     高温機械のそばに遮熱板や冷風機を設置し、作業ゾーン全体ではなく、スポットで気温を下げる工夫をします

②作業方法:計画的に休憩と作業時間を配分

  • 作業休憩の導入
     30~60分に一度、5~10分程度の水分・塩分補給を兼ねた休憩を。高齢者や夏季活動が苦手な人は、休憩頻度の調整が必要です。
  • 時間帯の工夫
     気温の低い朝・夕方を中心に、重作業や搬入を行うようスケジュール調整を。
  • ペア作業・チェック体制
     定期的に相互の体調を確認し合う体制を築きましょう。特に新人や作業経験の浅い人は重点モニタリングが必要です。

③水分・塩分補給:意識的に摂取を

  • こまめな水分補給
     500mLペットボトルを一人1本準備し、「のどが渇く前」に飲む習慣をつけます。ペットボトルでは塩分は摂れないため…
  • 適切な塩分摂取
     スポーツドリンクや塩分入り顆粒を活用。塩分摂取の目安は、1~2g/500mL程度。屋内でも発汗は続きます。
  • バランス良い栄養摂取
     朝食・昼食に野菜・たんぱく質・ミネラルを取り、体力を温存します。夜は昼より塩分少なめに。

④服装・個人防護:熱と湿度への工夫

  • 速乾性・通気性のある作業服
     吸汗速乾素材で、ゆったりとしたデザインのものがおすすめです。
  • ヘルメットインナー/タオル使用
     ヘルメット内にクールインナーや冷感タオルを装着することで、頭部の温度上昇を抑えます。
  • UVカットや遮熱帽
     屋根の高い倉庫では放射熱もあります。遮熱タイプの帽子やインナーが効果的です。
  • 冷却グッズ活用
     ネッククーラー、アイスベストなど、着脱可能で再利用できる冷却用品を取り入れましょう。

健康管理:産業医としての視点で

①事前健康チェック

  • 身体計測・体調ヒアリング
     体重、腹囲、血圧、HbA1cなどを定期的に計測。糖尿病や高血圧などのリスク因子がある方は要注意です。
  • 既往歴の確認
     心疾患、腎障害、脳卒中など過去に疾患がある方は、心臓や血管への負荷を軽減する必要があります。

②作業者教育・研修

  • 熱中症セルフチェック講習
     「なんとなく体調おかしい」「息苦しさを感じる」などの小さな兆候に気づく訓練を実施。
  • 応急処置訓練
     スポーツドリンクの用意、冷却方法(首・脇下・足付け根)などを実地で学びます。
  • 現場巡視の強化
     企業の責任としてマネージャー・リーダーは巡回し、作業状況・体調を確認。
  • チェックリスト活用
     出勤時/休憩後のセルフチェックリストを活用し、記録・見守りを徹底。

③緊急対応と連携

  • 熱中症発症時の対応手順(フローチャート化)
     救急要請→応急処置→企業内医療担当への連絡、など明文化しておく。
  • 救急連携体制
     最寄り消防署・救急病院との連携も確認し、搬送までの時間を短縮します。
  • 後追いフォロー
     発症した方の経過観察、復帰基準・健康指導(無理しない段階的復帰)を行います。

実施事例:現場改善のリアルな取り組み

A社(食品工場)

業務中に冷凍室の出入りを繰り返す環境で、スポット冷風機を導入。また「10分おきにファンを通す換気ショートタイム」を取り入れ、熱中症発症ゼロを達成。

B社(物流倉庫)

作業衣を速乾タイプへ変更。さらに首・脇・股下冷却ベストを導入したスタッフからは「体が涼しく感じて集中力が続く」と好評。

屋内熱中症対策チェックリスト

対策項目チェック対策ポイント
空調・換気設備定期的に送風・扇風機を点検
遮熱/断熱屋根・壁の遮熱塗装を検討
作業時間帯調整高温時間帯の重作業を避ける
ペアチェック体制毎回声かけ・体調確認実施
休憩&補給スケジュール30~60分ごとに5~10分の休憩
服装・防護用品冷却グッズ、速乾服の支給
教育・訓練実施熱中症予防・応急処置研修
緊急対応体制整備救急フロー・搬送先の確認

まとめ ~小さな工夫で安全な職場へ~

屋内でも油断は禁物です。環境改善・作業見直し・身体ケア・教育・緊急対応という多角的アプローチが、熱中症から従業員を守ります。工場や倉庫といった職場は年間を通して高温リスクにさらされがちですが、適切な対策を行えば、安全かつ健康的な労働環境になります。企業の信頼性や生産性向上にもつながりますので、ぜひ本記事を参考に、具体的な取り組みを始めていただければ幸いです。

株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平
野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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