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ストレスチェックは「目的」ではない
2015年に労働安全衛生法の改正により、従業員50人以上の企業に義務付けられた「ストレスチェック制度」。導入から10年が経過し、多くの企業では年に一度の定期業務として定着しています。
しかしながら、実施することそのものが“目的化”してしまい、チェック結果の活用が不十分な企業も少なくありません。ストレスチェックは「職場の健康状態を可視化するためのツール」にすぎず、それを活かして「どう職場を改善するか」が本当の目的です。
ここで中心的な存在となるのが“産業医”です。単に診断をするだけの存在ではなく、チェック後の対応に深く関わる専門職としての役割を再確認することが求められます。
産業医の真の役割:チェック後に始まる専門的支援
1. 高ストレス者への専門的面接指導
ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された従業員には、本人の申し出に基づき、産業医による面接指導が行われます。この面接は、精神的な不調を抱える社員を早期に発見し、必要な支援につなげる重要な機会です。
産業医はここで、表面的なストレス要因だけでなく、職場環境や家庭環境、生活習慣など多角的な観点からアセスメントを行い、必要に応じて就業制限や医療機関への紹介など、適切な対応を提案します。
2. 集団分析に基づく職場環境の改善提案
ストレスチェックの強みは「個人のストレス」だけでなく「集団(部署・職場単位)の傾向」を分析できる点にあります。産業医はこの集団分析結果をもとに、課題を抽出し、職場環境の改善提案を行います。
たとえば、「上司との信頼関係が低い」「業務量が過大である」「裁量権が少ない」といった傾向が読み取れた場合、管理職への教育や業務配分の見直しといった具体的施策が考えられます。
3. 産業保健チームとの継続的な連携
面接指導や集団分析だけでは、持続的な改善にはつながりません。産業医は、保健師や人事部門と連携し、フォローアップ面談の実施、再発防止策の検討、休職・復職支援など、長期的な対応を行います。
このように産業医は、単なる「医師」ではなく、組織の“健康経営”を支える戦略的パートナーなのです。
放置された結果:形骸化したストレスチェックが招く弊害
実際、多くの企業では、ストレスチェックを実施した後「高ストレス者はいなかった」と安心してしまい、その後の対策が取られないまま終わるケースが見られます。
このような“実施だけ”で満足してしまう風潮は、形骸化を招き、逆に職場全体の健康リスクを見逃す結果になりかねません。
また、「面接指導を申し出ると不利益があるのではないか」といった不信感がある職場では、制度そのものが形だけのものになってしまいます。
企業側のメリット:産業医が本気で動くとこう変わる
では、産業医が積極的に関わることで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか?
- 早期離職・長期休職の防止
- 職場環境の継続的改善
- 従業員のエンゲージメント向上
- 企業のブランド価値向上
- 労災リスクや訴訟リスクの低減
これらの効果は「数字」として現れることも多く、特に人材の流動性が高い現代においては、従業員の定着率向上に大きく貢献します。
まとめ
ストレスチェックは、従業員のメンタル不調を早期に把握するための制度です。しかし、真の価値は“チェック後”に生まれます。その中核を担うのが産業医であり、彼らの知見を最大限活用することこそ、企業の健康経営への第一歩です。
「チェックして終わり」から「改善につなげる運用」へ。企業と産業医の真のパートナーシップが、これからの組織の在り方を大きく変えていくでしょう。
株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス
弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
- 2021年8月 エターナルフィット西町南 開業
- 2022年11月 エターナルフィット厚別 開業
- 2024年7月 エターナルフィット円山 開業
- 救急科専門医
- 産業衛生専攻医
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医
- 脳血管内治療専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 産業医
- 労働衛生コンサルタント
- 健康経営エキスパートアドバイザー
- 健康運動指導士
- 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)
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