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従業員が本音を話せるストレスチェックの環境作りとは

ストレスチェック本音 アイキャッチ

形骸化したストレスチェックでは意味がない

企業におけるメンタルヘルス対策の柱として、「ストレスチェック制度」は2015年の法改正以降、多くの企業で導入されています。しかし、実際の現場では、従業員が本音を語れず、制度が形だけのものになっているケースも少なくありません。

その理由は、「人事評価に使われるのでは?」「匿名と言っても実際はバレるのでは?」という不安や、過去に意見を出しても改善がなされなかったという“あきらめ”の気持ちにあります。

本記事では、産業医の立場から、従業員が本音を話せるストレスチェックの環境づくりについて、実務的かつ具体的に解説していきます。

本音が語られない背景

ストレスチェックで本音が語られない理由には、心理的・制度的な複数の要因が絡み合っています。以下、その主な背景を見ていきましょう。

①回答内容が不利益に使われる懸念

最も多く聞かれるのが、「ストレスチェックの内容が人事評価や異動に使われるのではないか」という不安です。たとえ制度上そのような利用が禁止されていても、実際に企業文化としてそうした懸念を抱かせる風土があれば、従業員は本音を控えるようになります。

②匿名性への不信感

「IDで管理されているのでは?」「回答のパターンから誰か特定されるのでは?」という不信感も根強くあります。特に規模の小さな部署では、回答傾向が目立ちやすいため、「どうせバレる」と感じてしまうのです。

③過去の経験による“無力感”

過去に「職場環境が悪い」とフィードバックしても、何の改善も行われなかった経験を持つ従業員は、「どうせ言っても無駄」と考えるようになります。これは、従業員の信頼を損なう最たる要因です。

環境づくりの基本方針

従業員が安心して本音を語るためには、まず「制度への信頼」が必要です。そのために企業が取り組むべき基本的な方針を4つ紹介します。

①匿名性の徹底周知

ストレスチェックの設計段階で「誰が何を答えたかは分からない」ことを明確にし、従業員にも具体的に説明することが大切です。ITシステムの選定時にも、匿名性を確実に担保できる設計か確認しましょう。

②回答内容は人事に使わないと明言

就業規則や社内通達で「ストレスチェックの結果は人事評価・配置に一切使用しない」と明文化し、従業員に周知する必要があります。疑念を払拭するには、明確な“保証”が求められます。

③外部専門家の関与

外部の産業医や精神保健福祉士など第三者が介在することで、情報の公平性・中立性が担保されます。加えて、産業医が「会社とは異なる立場で守秘義務を持つ存在」であることも説明すると、従業員の安心感が高まります。

④結果に対しての組織的なアクション

フィードバック結果を元に、実際に職場環境が改善されることを経験すれば、従業員の信頼は高まります。逆に何の動きもなければ、「ただの形式的なアンケート」と受け取られてしまいます。

信頼を築くための具体策

制度や仕組みだけでなく、職場全体の“心理的安全性”を育むことも欠かせません。以下に、継続的に信頼関係を築くための具体的な施策を紹介します。

①定期的なヒアリングや1on1面談の実施

年に1回のストレスチェックだけでなく、3ヶ月に1度の簡易アンケートや1on1面談を通じて、日常的に声を拾う体制を整えることが重要です。特に中間管理職には、こうしたヒアリングスキルを養う研修が有効です。

②管理職へのメンタルヘルス研修

「話してはいけない」「見て見ぬふりをする」といった職場風土を変えるためには、管理職層の教育が欠かせません。ストレスチェックの背景や対応方法を理解してもらうことで、現場での信頼が高まります。

③高ストレス者へのフォローアップ体制の整備

高ストレス判定を受けた従業員には、必ず産業医や外部カウンセラーとの面談を案内し、その内容が人事に共有されないことを明言しましょう。ここでも「守秘義務」の説明は不可欠です。

④社内報やイントラネットでの改善共有

「○○部での騒音対策を行いました」「残業時間の見直しを実施しました」など、フィードバック→改善→報告のループを社内に可視化することが信頼を生むポイントです。

健康経営の視点からの意義

ストレスチェックの目的は、単なる義務の履行ではなく「職場の健全性向上」にあります。従業員が本音を語れる職場環境は、結果的に以下のような効果をもたらします。

生産性の向上

従業員が精神的に安定していれば、集中力・創造力が高まり、結果として業務効率も向上します。

離職率の低下

メンタル不調を早期に把握し対処できるため、離職を防ぎやすくなります。特に若年層の定着率に大きく影響します。

組織への信頼性の向上

従業員が「会社は本気で自分たちのことを考えている」と感じることで、エンゲージメントが高まり、結果的に企業イメージも向上します。

まとめ ~制度から信頼へ、信頼から改善へ~

ストレスチェックの真価は、「従業員の声を起点とした職場改善」にあります。そのためには、産業医や外部専門家の関与のもとで匿名性と中立性を保ち、さらに改善の成果を可視化し、フィードバックを繰り返す必要があります。

本音を語れる環境づくりは、単なる制度設計ではなく、職場文化の醸成から始まるものです。メンタルヘルスを軸にした“健康経営”を本気で実現するならば、まずは従業員の声に真摯に向き合う姿勢から始めましょう。

株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平
野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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