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熱中症で下痢!? その原因と正しい対策法を医師が徹底解説

熱中症、下痢 アイキャッチ

はじめに:熱中症と下痢の関係とは?

「熱中症」と聞くと、めまいや吐き気、意識障害などを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし近年、熱中症の症状として「下痢」も報告されるようになってきました

実は、熱中症によって胃腸の機能が低下し、結果的に下痢を引き起こすことがあります。この記事では、産業医・救急科専門医の視点から「なぜ熱中症で下痢になるのか」「その時の対策はどうすればよいか」について詳しく解説します。

熱中症とは何か?

熱中症の種類と症状

熱中症は、体温が上昇しすぎることで起きる身体障害の総称です。主に以下の3段階に分類されます。

  • 熱失神:めまい、立ちくらみ
  • 熱疲労:脱力感、発汗、頭痛、吐き気
  • 熱射病:意識障害、高体温、臓器障害(命の危険)

発症のメカニズム

高温多湿の環境下で、体内の熱を放出できなくなると体温が急上昇します。このとき、発汗による脱水、電解質の喪失が進行すると、全身の臓器機能が低下し始めます。消化管も例外ではなく、これが「下痢」に繋がるのです。

熱中症と下痢の関係性

なぜ熱中症で下痢が起こるのか?

  • 体温の急上昇により、腸の血流が低下
  • 消化吸収機能が一時的にストップ
  • その結果、水分を吸収できずに水様性の下痢が発生

特に高齢者や子どもではこの傾向が顕著で、下痢と脱水が重なると重篤な状態に至ることもあります。

体温上昇と消化器への影響

消化管は自律神経の影響を受けやすく、体温が高くなると腸の動きが過剰になり、結果として下痢を引き起こすことがあります。また、脱水による電解質異常(ナトリウムやカリウムの低下)も下痢を助長します。

他の病気との見分け方

  • 感染性胃腸炎との違い:発熱や腹痛、嘔吐を伴うことが多い
  • 食中毒との違い:複数人が同時発症するケースが多い
  • 熱中症では「高温環境での活動」「発汗」「意識のぼんやり感」などの状況証拠が重要

下痢を伴う熱中症の危険性

脱水の二重リスク

  • 発汗による水分・塩分の喪失
  • 下痢による水分・電解質の追加損失

この二重の脱水状態は、腎機能障害や意識障害を引き起こす危険性があります。特に体重あたりの水分保持力が低い高齢者や小児は注意が必要です。

症状が進行した場合の対応

  • 意識がぼんやりしている、または応答がない
  • 口が渇いてしゃべれない、尿が出ない
  • 下痢が止まらない、血が混じっている

このような場合はすぐに医療機関へ。特に熱射病の状態に進行している可能性が高く、早急な点滴・体温管理が必要です。

熱中症と下痢の予防・対策

日常生活での予防法

  • 室温を28℃以下に保つ
  • 日中の外出はできるだけ避ける
  • 通気性の良い服を選ぶ
  • 適度な休息をとる(90分作業→15分休憩など)

正しい水分・電解質補給の仕方

  • 単なる水ではなく、経口補水液(OS-1など)を活用
  • 発汗量に応じて塩分も摂取(梅干し、塩飴など)
  • 下痢があるときはポカリスエットよりOS-1が適している(ナトリウム濃度が高いため)

職場・屋外活動時の工夫

  • 暑さ指数(WBGT)を確認し活動時間を調整
  • こまめな水分補給ルールを職場内で共有
  • 保冷剤付きベストや帽子、冷感タオルなどの物理的対策も有効

まとめ:熱中症による下痢を防ぐには?

熱中症によって起きる下痢は、単なる胃腸の不調ではなく、命に関わるサインかもしれません。暑い中での活動後に下痢が起きたら、それは「見逃せない熱中症の症状」であると捉えるべきです。

下痢が起きたときは無理に食事を摂らず、水分と電解質の補給を優先しましょう。そして症状が長引いたり、脱水症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診してください。

厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト

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【代表紹介】 野呂 昇平

野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

【各種資格】

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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