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【産業医監修】産業医の資格とは?取得方法・必要条件・キャリア展望まで徹底解説

産業医 取得 アイキャッチ

産業医とは?その役割と需要

産業医とは、企業などの事業所で働く従業員の健康を守ることを目的に活動する医師です。近年、働き方改革やメンタルヘルス問題への関心が高まる中で、企業における産業医の重要性は増しています。

労働安全衛生法により、一定規模以上の事業所では産業医の選任が義務付けられています。常時50人以上の労働者がいる場合には、原則として1名の産業医を選任する必要があり、労働者の健康診断の実施、過重労働者への面談、職場環境の改善提案などを行います。

産業医の活動は、一般的な臨床医とは異なり、「予防医学」の視点が非常に重要です。従業員の健康維持・促進を支援することで、企業の生産性向上にも寄与する、まさに企業と従業員をつなぐ重要なポジションです。

産業医になるには?3つの方法とそれぞれの特徴

方法①:日本医師会の「産業医研修」を受ける

もっとも一般的なルートが、日本医師会などが実施する産業医研修を受講して「認定産業医」の資格を取得する方法です。

必要な研修単位(計50単位以上)

  1. 前期研修(14単位以上)
    総論・健康管理・メンタルヘルス・作業環境管理など、8項目を学ぶ入門的研修です。
  2. 実地研修(10単位以上)
    職場巡視や作業環境測定など、実務に即した内容を体験的に学びます。
  3. 後期研修(26単位以上)
    地域の産業特性に応じた専門的な研修で、実践力を高めます。

研修は全国の地方医師会や日本医師会が随時開催しています。研修受講後、最終受講日から5年以内に1回限り申請が可能です。

★ポイント
・働きながらコツコツ単位を取得できる
・希望地域で受講できる柔軟さがある

こちらのサイトから開催される研修会を調べることができます

方法②:産業医科大学の集中講座を受講する

時間的制約がある方に人気なのが、産業医科大学が開催する「集中講座」です。卒業生以外の医師も受講可能で、6日間程度で必要な単位を取得できます。

講座の概要

  • 開催時期:例年7月下旬〜8月上旬(申込は3月頃から)
  • 開催場所:福岡や東京(日本医師会と共同開催もあり)
  • 募集人数:抽選による選抜制(人気が高いため早めの申込みを)

短期間で必要単位が一気に取得できるため、忙しい勤務医の方や開業医に好評です。

★ポイント
・6日間で効率よく資格取得が可能
・抽選制のため受講できない場合もある

方法③:労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格する

より専門性を高めたい方や、国家資格にこだわりたい方には、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格する方法もあります。

この試験に合格すると、産業医の要件を満たすことができます。特に産業医としての専門知識や実務力を証明したい場合に有利です。

医師の受験者に対する特例

  • 医師免許を持っていれば、一部の試験科目(労働衛生一般・健康管理)は免除
  • さらに、所定の「産業医学講習会」等を修了していれば全科目免除も可能

ただし、一般の産業医研修(基礎研修会や認定産業医研修会)は免除対象ではないので注意が必要です。

★ポイント
・産業医以外の業務(衛生診断・コンサル)にも活かせる
・取得難易度はやや高めだが信頼性がある

産業医資格取得後のキャリアと収入

産業医として働くスタイルには、「非常勤」「常勤」「嘱託」など複数の形態があります。多くの産業医は非常勤で複数の企業を掛け持ちするスタイルを取っています。これは、フレキシブルな働き方を求める医師にとって魅力的です。

一方、企業内に常駐する「専属産業医(常勤)」は、大企業でよく見られ、年収も800万円〜1200万円程度が相場とされています。専門性の高い業務を行うため、専門産業医の資格や実務経験が重視されます。

副業として産業医を行うケースもあり、臨床業務との両立も可能です。そのため、キャリアの幅を広げる選択肢としても注目されています。

産業医を目指すあなたへ~知っておくべきポイント~

産業医は、医療従事者でありながら企業というフィールドで活躍するユニークな職業です。患者を診るのではなく、従業員全体の健康を管理・支援するため、広い視野とコミュニケーション能力が求められます。

資格取得自体は比較的明確なルートがあり、医師免許+講習でスタートできますが、実際の現場では労働法や心理的ケア、経営者との対話など、医療以外の知識やスキルも重要です。

また、今後も働き方の多様化やメンタルヘルス問題が増加していくことが予想される中、産業医の需要はさらに高まることが期待されます。資格を取得して終わりではなく、継続的な学習とアップデートが求められる分野といえるでしょう。

まとめ

産業医は、企業で従業員の健康を守る専門医師です。医師免許を取得後、日本医師会の講習を修了することで認定産業医として活動できます。さらに高度な専門産業医も存在し、キャリアや報酬面で優遇されることが多いです。多様な働き方が可能で、副業としても人気があり、今後ますます需要が高まる職業といえます。

産業医という職業は、これからの時代に非常にマッチした医師の新しい働き方を示しています。臨床現場だけでなく、職場というフィールドで人々の健康を支えるという重要な使命があります。

医師免許と講習でスタートできる一方で、専門知識や人間力が求められるやりがいのある職業です。今後のキャリアを考える上で、「産業医」という選択肢をぜひ検討してみてください。