NEWSお知らせ

【アスベスト曝露リスクと対策】産業医が解説する健康被害と安全管理

アスベスト アイキャッチ

アスベストはかつて建材や工業製品に広く使用されましたが、長期的な健康被害が判明したため、現在は厳しく規制されています。しかし、過去の建築物や工場設備などには依然としてアスベストが含まれており、適切な対策を講じなければ労働者や一般の人々の健康を脅かす可能性があります。

本記事では、「アスベスト(石綿)曝露による健康リスクと、それを防ぐための対策」について、産業医の視点から詳しく解説します。

この記事を読むことで、アスベストの危険性を正しく理解し、リスクを回避するための知識を深めることができます。ぜひ最後までご覧ください!


アスベストとは?その用途と特性

アスベストとは?

アスベスト(Asbestos)とは、天然に産出する繊維状鉱物であり、その細かい繊維が高い耐熱性・耐薬品性・絶縁性を持つことから、過去にさまざまな建築資材や工業製品に使用されてきました。

代表的なアスベストの用途:

・一部の家庭用品(古い電気アイロンやガスケット)

・建材(吹き付け材、スレート、耐火被覆材など)

・ブレーキライニングやクラッチ板

・電気・配管設備の断熱材

アスベスト

アスベストの問題点

アスベストが問題視される最大の理由は、「吸入による健康被害」です。アスベスト繊維は非常に細かく、吸い込むと肺に沈着し、長期間にわたり体内に留まります。その結果、肺の病気やがんのリスクを高めることが知られています。


 アスベスト曝露による健康被害

じん肺(石綿肺)

アスベストを長期間吸入することで、肺に炎症や線維化(硬くなること)が生じる「石綿肺(せきめんはい)」と呼ばれる病気を引き起こします。これは慢性的な肺疾患であり、進行すると呼吸困難や酸素不足を招きます。

中皮腫

アスベスト曝露と最も関連が深いがんが「中皮腫」です。中皮腫は、肺を覆う胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍で、発症までに20~50年の潜伏期間があります。特に、過去にアスベストを扱った労働者が高リスク群とされています。

肺がん

アスベスト曝露は肺がんのリスクも大幅に高めます。特に喫煙者の場合、アスベスト曝露との相乗効果により肺がんの発生率が飛躍的に上昇するため注意が必要です。


アスベスト曝露リスクが高い職業と作業環境

高リスク職業

アスベストの危険性が広く知られるようになった現在でも、以下の職業では曝露リスクが存在します。

  • 建築解体業
  • 造船業(旧式の船舶にはアスベストが使用されていることが多い)
  • ボイラー整備工
  • 自動車整備士(古いブレーキライニングの交換)
  • 製鉄業や化学工場のメンテナンス業務

曝露リスクが高い環境

アスベストは粉じんとして空気中に浮遊しやすく、特に解体作業や修理作業時に大量に飛散します。換気が不十分な環境や、保護具を適切に装着していない状態での作業は非常に危険です。


曝露を防ぐための対策と安全管理

法規制と適切な管理

日本では、アスベストの使用が2006年に原則禁止されました。しかし、既存の建物や工場には依然としてアスベストが残っており、安全管理が求められます。

主要な規制:

  • 「労働安全衛生法」によるアスベスト対策の義務化
  • 建築物の解体時の事前調査と報告の義務
  • 「特定粉じん障害防止規則」による飛散防止対策

作業時の個人防護策

アスベストを扱う可能性がある作業者は、適切な個人防護具を使用しなければなりません。

推奨される防護具:

  • 高性能防じんマスク(P3フィルター推奨)
  • 使い捨て防護服(作業後に適切に処分する)
  • ゴーグル(眼からの曝露防止)

作業後の対策

アスベスト曝露を最小限に抑えるために、作業後は以下の点に注意しましょう。

  • 作業後のシャワーや衣服の適切な処理(家庭へ持ち帰らないようにする)
  • 作業場の換気と清掃を徹底する
  • 定期的な健康診断の実施

健康診断と医療的ケアの重要性

アスベスト関連疾患の早期発見

アスベスト関連疾患は潜伏期間が長いため、過去に曝露歴がある人は定期的な健康診断が重要です。

定期的な特殊健康診断が必要になるだけではなく、

推奨される検査:

・呼吸機能検査

・胸部X線検査

・CTスキャン(早期の中皮腫や肺がんの発見に有効)

じん肺

健康管理手帳

  • 石綿を取り扱う業務に従事していた方、または従事していた可能性のある方に対して、健康管理手帳が交付されます
  • 健康管理手帳の交付対象者は、指定された医療機関で定められた健康診断を無料で受けることができます(交付対象者に限る)
  • 健康管理手帳の交付対象となるのは、過去に石綿業務に従事しており、現在は石綿業務から離れている方です
  • 離職の際または離職の後に住所地の都道府県労働局長に申請することで健康管理手帳が交付されます

定期的な健康診断

  • 石綿を含む建築材料の解体または回収作業に従事する労働者には、一般健康診断以外に、6ヶ月ごとに実施する「石綿作業従事者に対する健康診断」が実施されます
  • 過去に特定の石綿作業に従事したことがあり、現に使用している労働者に対しても定期健康診断が実施されます

一次健康診断
 (1)  業務の経歴の調査
 (2)  石綿によるせき,たん,息切れ,胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
 (3)  せき,たん,息切れ,胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
 (4)  胸部のエックス線直接撮影による検査

二次健康診断
 (1)  作業条件の調査
 (2)  胸部のエックス線直接撮影による検査の結果、異常な陰影がある場合で、医師が必要と認めるときは、特殊なエックス線撮影による検査,喀たんの細胞診又は気管支鏡検査

健康障害のリスク

  • 石綿による健康障害は、潜伏期間が数十年と長い場合があります
  • 石綿にばく露するような作業に従事されていたのであれば、1年に1回は胸部レントゲン撮影等による健康診断を受診されることをお勧めします

医療機関との連携

アスベスト曝露歴がある人は、産業医や専門医と連携し、長期的な健康管理を行うことが推奨されます。

参考サイト:厚生労働省 石綿作業従事者に対する健康診断

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/iryo


まとめ

アスベスト曝露は、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、適切な対策が不可欠です。特に、過去にアスベストを扱った経験がある人や解体作業を行う人は、曝露リスクを最小限に抑えるための安全管理を徹底しましょう。また、定期的な健康診断を受け、早期発見・早期治療を心がけることが重要です。

【産業医について】

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平

野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

【各種資格】

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

~お問い合わせ・資料請求について~
下記ボタンより、お問い合わせ・資料請求ができます。