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【ほとんどの産業医が知らない】企業に必要な4つの法令順守とは

法令順守、コンプライアンス

はじめに


「これから産業医を選任したけど、何を頼めばよいのだろう」

「産業医にきいても月に1回会社にきて、健康診断の結果をみるだけ」

「ネットで調べても色々難しいことが書いてあって、誰に相談したらよいかわからない」

企業が産業医を導入したら、まず確認すべき法令があります。事業所単位で50人を超えた場合、色々守らなければいけないルール(法令)があります。中小企業で働く多くの産業医は、自分で必要な法令順守を調べて、経営者や企業内産業保健スタッフと打ち合わせをして年間のスケジュールを立てているわけではなく、前任者がやっていた通りに行うことがほとんどです。そのため、法令順守がほとんどされておらず、労働基準監督署から厳しい指導が入ることを耳にします。実際に守らなければいけない法令は多いですが、最初に取り掛かる4つの法令順守事項について今回は徹底解説します。すでに産業医を選任している企業の担当者の方は1つでも漏れているものがあれば、すぐに対応し、産業医に伝えてください!


産業医による職場巡視

    【労働安全衛生法第13条に基づく義務】

    労働安全衛生法では、従業員が50人以上いる事業場には「産業医の選任」を義務付けています。
    さらに、産業医は毎月1回以上、職場巡視を行い、労働者の健康や安全衛生に関する助言を行う義務 があります(50人未満の事業場では2か月に1回の巡視でも問題ないです)

    【企業が守るべきルール】

    産業医を選任し、毎月1回以上の職場巡視を実施
    巡視の結果を記録し、適切な改善策を検討
    労働者の健康管理について適切な措置を取る


    産業医が職場巡視でチェックするポイント

    産業医の巡視では、主に以下の項目が確認されます。

    ① 労働環境(物理的・化学的リスク)

    • 照明、騒音、温度・湿度の管理が適切か
    • 化学物質や粉じんの管理状況(MSDSの有無)
    • 防護具(マスク、ゴーグル、手袋など)が適切に使用されているか

    ② 労働者の健康状態のチェック

    • 長時間労働者が適切に管理されているか
    • 疲労やストレスを抱える従業員がいないか
    • 休憩スペースや仮眠室の整備状況

    ③ 作業環境のリスク評価

    • 事故やケガのリスクがある作業エリアの特定
    • 転倒・転落リスクのある場所の確認
    • 機械の安全装置や防護柵が適切に設置されているか

    このようなチェックを通じて、企業は労働環境の問題を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。最近はデスクワーク中心の事業所が多く、化学物質について経験したことがない産業医がほとんどかと思います。局所換気や全体換気が不十分になると、二酸化炭素や一酸化炭素が貯留しやすくなります。心配な場合は労働衛生コンサルタントや作業環境測定士に相談してください。


    産業医の職場巡視を適切に行わないとどうなる?

    【法律違反のリスク】

    産業医の巡視を怠る、または適切に実施しない場合、企業には以下のリスクが生じます。

    労働基準監督署の指導・行政指導
    労働災害が発生した場合、企業の責任が問われる
    最悪の場合、50万円以下の罰金が科される可能性

    また、労働環境が悪化すると、従業員のメンタルヘルスや離職率にも影響を及ぼし、結果として 生産性の低下や企業の評判悪化 につながる可能性があります。


    産業医による職場巡視の効果的な活用方法

    ただ巡視をするだけでは意味がありません。企業が 職場巡視を有効に活用するためのポイント を紹介します。

    ① 巡視結果をデータ化し、改善策を実施

    • 産業医の指摘事項を記録し、対応策を明確化
    • 毎月の衛生委員会で改善状況をチェック

    ② 労働者の意見を取り入れる

    • 産業医が従業員と直接話し、職場の問題点をヒアリング
    • 「見せかけの巡視」ではなく、実際の労働環境の改善に活かす

    ③ 経営層と連携し、組織全体で取り組む

    • 産業医の報告を経営層が把握し、具体的な対策を決定
    • 予算を確保し、必要な環境改善を実施

    事例紹介

    実際に私が職場巡視を行った事業所では、職場巡視と衛生委員会を定期的に行うことで、事業所が自主的に職場環境の改善策を実施し、従業員の満足度向上につながったケースもありました。例えば、温度計/湿度計を設置していない事務所への設置を指示。その後、湿度が低いことが分かり、巡視記録を参考に、衛生委員会の議事録で経営陣に報告し、必要十分量の加湿器を設置できたケースが4件ありました。また高血圧の方が多い事業所では、健康診断の結果が他の企業に比較して高血圧症の患者が多い事実を提示し、安全配慮義務の観点からも血圧計の配置が必要と述べると、経営陣の心に響き、設置できたケースも3件ありました。いずれも専門家がきちんと確認し、記録を残して、従業員の意思を反映できたケースと考えております。


    健康診断の結果を労働基準監督署に提出(労働安全衛生法第66条)

    【労働安全衛生法第66条の規定】

    企業は以下の健康診断を実施し、その結果を適切に記録・管理しなければなりません。

    雇入れ時健康診断(新規採用時)
    定期健康診断(年1回)
    特定業務従事者健康診断(特定の業務に従事する労働者向け)
    海外派遣労働者健康診断(海外出張・赴任者向け)

    特に「定期健康診断の結果は、労働基準監督署に提出する義務がある」です。

    健康診断の結果報告の流れと必要書類

    【報告が必要な企業】

    常時 50人以上の労働者 を雇用する事業場では、 定期健康診断結果報告書 の提出が義務付けられています。

    【提出の流れ】

    1️⃣ 健康診断を実施(労働者全員を対象に)
    2️⃣ 健康診断結果をまとめる(産業医と連携して健康管理を行う)
    3️⃣ 「定期健康診断結果報告書」に記入
    4️⃣ 労働基準監督署へ提出(管轄の労働基準監督署に郵送または電子申請)

    提出期限健康診断実施後、速やかに報告する必要あり(目安として3か月以内)

    【報告に必要な書類】

    ✅ 定期健康診断結果報告書(様式第6号)
    ✅ 労働者ごとの健康診断結果の一覧表

    ※ 報告書は労働局のウェブサイトからダウンロード可能 です。

    健康診断結果を提出しないとどうなる?罰則リスク

    【未提出・不適切な管理のリスク】

    健康診断結果を労働基準監督署に提出しない場合、企業は以下のリスクを負う可能性があります。

    🚨 50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)
    🚨 監督署から指導・行政処分の対象になる
    🚨 労働者の健康悪化による労災発生時に企業責任が問われる

    特に 労災事故が発生した際、企業の健康管理が不十分と判断されると、安全配慮義務違反となるリスク もあります。

    企業が健康診断結果を適切に管理するポイント

    健康診断の結果を労働基準監督署に適切に提出するだけでなく、従業員の健康管理を徹底することが重要 です。

    産業医と連携して健康管理を強化

    • 産業医と定期的に健康診断結果を確認し、職場の健康リスクを把握する
    • 異常値のある従業員には適切な対応を行い、産業医面談 を実施する

    健康診断結果の保管を徹底(5年間保管)

    • 健康診断結果は5年間保管し、労働基準監督署の指導に対応できるようにする

    労働者の健康指導・フォローを強化

    • 高血圧や生活習慣病リスクの高い従業員には、医療機関の受診を促す
    • 労働環境の改善(長時間労働の是正、適切な休憩時間の確保)を実施

    ストレスチェック結果の集計データを提出する義務(労働安全衛生法第66条の10)

    【労働安全衛生法第66条の10の規定】

    ストレスチェック制度とは、 従業員のメンタルヘルスを評価し、労働環境を改善するための制度 です。
    従業員50人以上の事業場では、
    ✅ 年1回のストレスチェックの実施
    ✅ 結果を集計し、労働基準監督署に報告
    が義務となります。

    50人未満の事業場は努力義務(実施は任意) ですが、実施することで職場のメンタルヘルス管理を強化できます。


    ストレスチェック結果の報告の流れと必要書類

    【報告が必要な企業】 

    常時50人以上の労働者を雇用する事業場

    【提出の流れ】

    1️⃣ ストレスチェックを実施(年1回)
    2️⃣ 結果を集計し、高ストレス者を抽出
    3️⃣ 「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」に記入
    4️⃣ 労働基準監督署へ提出(郵送または電子申請)

    📌 提出期限ストレスチェック実施後、遅くとも1年以内に報告

    【報告に必要な書類】

    「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」(厚生労働省のサイトからダウンロード可)
    事業場のストレスチェック結果の集計データ


    ストレスチェック結果を提出しないとどうなる?罰則リスク

    【未提出・未実施のリスク】

    ストレスチェックを実施せず、結果を労働基準監督署に報告しない場合、企業には以下のリスクが発生します。

    🚨 50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)
    🚨 労働基準監督署からの指導・行政処分の対象
    🚨 メンタルヘルス不調による労災認定のリスク

    特に、ストレスチェックを怠ることで 従業員のメンタルヘルス不調が見逃され、結果として休職や労災につながる可能性 があります。
    企業の安全配慮義務違反と判断されると、損害賠償請求などのリスクも発生します。


    ストレスチェック結果を適切に活用するポイント

    ストレスチェックの結果を労働基準監督署に提出するだけでは意味がありません。
    企業は、職場のメンタルヘルス改善に活かすことが重要 です。

    産業医と連携し、メンタルヘルス対策を強化

    • 高ストレス者の産業医面談を実施
    • ストレスの原因を特定し、労働環境の改善策を提案

    職場のメンタルヘルス対策を強化

    • 長時間労働の是正、適切な休憩時間の確保
    • ハラスメント防止策の強化

    ストレスチェックの結果を継続的に活用

    • 毎年のストレスチェック結果を比較し、改善状況を確認
    • 職場環境の改善を定期的に見直す

    月1回の衛生委員会の実施(労働安全衛生規則第18条)

    1. 衛生委員会の実施義務とは?(労働安全衛生規則第18条)

    【衛生委員会の設置義務】

    労働安全衛生規則第18条に基づき、以下の条件を満たす事業場では、月1回の衛生委員会の開催が義務付けられています。

    常時50人以上の労働者を使用する事業場
    労働者の健康管理や職場環境の改善を目的として開催
    衛生委員会の議事録を作成し、3年間保存する義務


    衛生委員会の目的と役割

    衛生委員会の目的は、職場の衛生管理と労働者の健康を守ること です。
    具体的には、以下のような役割を果たします。

    ① 労働者の健康管理

    • 定期健康診断やストレスチェックの結果をもとに、健康リスクを評価
    • 長時間労働者の健康管理の改善策を検討

    ② 作業環境の安全管理

    • 職場の 温度・湿度・照明・騒音などの作業環境をチェック
    • 化学物質の管理や防護具(マスク、手袋など)の使用状況を確認

    ③ メンタルヘルス対策の強化

    • ストレスチェックの結果を活用し、職場のストレス軽減策を検討
    • 産業医との連携を強化し、メンタルヘルス不調者のフォロー

    衛生委員会のメンバーと開催方法

    【衛生委員会の構成メンバー】

    衛生委員会は、以下のメンバーで構成されることが求められています。

    • 総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者
    • 衛生管理者
    • 産業医
    • 衛生に関する経験を有する従業員

    【開催の流れ】

    1️⃣ 毎月1回、衛生委員会を開催(定期開催が必須)
    2️⃣ 職場環境や健康管理に関する問題点を話し合う
    3️⃣ 改善策を決定し、実施計画を立てる
    4️⃣ 議事録を作成し、3年間保存

    📌 開催日時を事前に決め、定期的に開催することが重要です!


    衛生委員会を適切に運用しないとどうなる?罰則リスク

    【未開催・不適切な運営のリスク】

    企業が衛生委員会を適切に実施しない場合、以下のようなリスクが発生します。

    🚨 50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)
    🚨 労働基準監督署からの指導・行政処分の対象
    🚨 労働災害発生時に企業責任が問われる可能性

    また、衛生委員会が適切に機能しないことで、
    ✅ 職場の衛生環境の悪化
    ✅ 従業員の健康悪化(メンタルヘルス不調や過労問題)
    ✅ 労災事故の増加
    などの問題が発生し、最終的に企業の生産性低下や信頼性の損失につながる 可能性があります。


    衛生委員会を効果的に活用するポイント

    産業医と連携し、実効性のある改善策を策定

    • 産業医のアドバイスをもとに、職場の健康管理を強化
    • ストレスチェック結果をもとに、メンタルヘルス対策を実施

    労働者の意見を反映し、現場の課題を解決

    • 労働者代表が現場の問題点を共有し、解決策を検討
    • 職場環境の改善を進め、従業員満足度を向上

    議事録をしっかり作成し、計画的に改善を進める

    • 議事録を毎回作成し、3年間保管(労基署の監査対策)
    • 過去の会議内容を振り返り、継続的な改善を実施

    まとめ

    いかがだったでしょうか。本日は最初に取り掛かる4つの法令順守事項について徹底解説させていただきました。

    1 産業医による職場巡視

    2 健康診断の結果を労働基準監督署に提出

    3 ストレスチェックの結果を労働基準監督署に提出

    4 月1回の衛生委員会の実施(労働安全衛生規則第18条)

    他にも色々と守らないといけないルールはありますが、この4つを最初に抑えることが重要です。毎日多くの顧問先に訪問しておりますが、特に重要なことは職場巡視と衛生委員会だと考えております。労働衛生は企業毎に抱える問題が変わってくるので、PDCAサイクルを意識して適切に運用することで、日々企業は成長することができます。正しい職場巡視と衛生委員会が行われない場合は、法令順守や産業保健、健康経営について全く成長しないどころか、時代のニーズに追いつけず退化します。労働者を1人でも雇っている企業も同様です。労働者のことを考え、適切な労働環境管理、労働管理、健康管理を行うことで生産性は飛躍的に向上します。

    定期的に 株式会社NoLaBo(札幌産業保健サービス)より産業医、産業保健サービス、健康経営などを情報発信していきます。弊社のサービスが多くの企業に伝わり、ともに成長できる企業になれることを願っております。


    【産業医について】

    弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

    【代表紹介】 野呂 昇平 

    【略歴】 
    2013年旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得
    その後、脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
    2021年8月エターナルフィット西町南 開業
    2022年11月エターナルフィット厚別 開業
    2024年7月エターナルフィット円山 開業

     【各種資格】
    ・救急科専門医
    ・産業衛生専攻医
    ・脳神経外科専門医
    ・脳卒中専門医
    ・脳血管内治療専門医
    ・日本医師会認定健康スポーツ医
    ・産業医
    ・健康経営エキスパートアドバイザー
    ・健康運動指導士
    ・公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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