目次
はじめに
近年の日本では猛暑日が増え、熱中症による救急搬送件数も年々増加しています。2024年夏も例外ではなく、すでに各地で厳しい暑さが報告されています。とくに福岡市東区・香椎地域など、都市部ではヒートアイランド現象も相まって、体感温度はさらに上昇します。こうした環境下で重要になるのが「水分補給の方法」です。
「熱中症予防には水をたくさん飲めばよい」と思われがちですが、実際には飲み方と飲むものの選択が9割を占めると言っても過言ではありません。
この記事では、現役の産業医かつ救急・脳神経・労働衛生の専門医が、科学的根拠に基づいて、経口補水液、スポーツドリンク、水の違いや、シーン別の最適な水分補給方法を詳しく解説します。
熱中症とは?体内で起こっていること
熱中症とは、体温調節機能の破綻と水分・電解質の喪失によって生じる身体障害の総称です。高温多湿の環境下で長時間過ごすことにより、体温の上昇とともに大量の汗をかき、水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの電解質も体外に失われます。
この結果、脱水、循環不全、意識障害などが引き起こされ、重症の場合は死に至ることもあります。とくに高齢者や乳幼児、持病を持つ方、そして屋外での作業や運動を行う人は、リスクが高くなります。
水分補給が重要な理由
体重の約60%を占める水分は、体温調節、血液循環、代謝、老廃物の排出など、生命活動に欠かせない役割を果たしています。汗をかくことで失われた水分と電解質を適切に補給しないと、脱水症状や熱中症を引き起こします。
つまり、単に「水を飲む」ことが重要なのではなく、「適切な成分を、適切なタイミングで摂取する」ことが重要なのです。
経口補水液・スポーツドリンク・水の違いとは?
経口補水液:医療現場で使われる“水分と電解質の特効薬”
経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、ナトリウム・カリウムなどの電解質とブドウ糖を一定の比率で含み、腸からの水分吸収効率を最大化するように設計された飲料です。下痢や嘔吐による脱水、軽度の熱中症対策など、医療現場でも使用される信頼性の高い水分補給手段です。
特に熱中症の初期症状が見られる場合には、最も推奨される飲料です。ただし、味がやや塩辛く飲みにくいと感じる人もいるため、普段から少量を試しておくと安心です。
スポーツドリンク:日常の活動に向いたバランス型
スポーツドリンクは、汗で失われるナトリウムやカリウムなどの電解質に加え、糖分も比較的多く含まれています。中等度の運動や軽度の脱水状態に適しており、飲みやすさと味の良さから広く普及しています。
ただし、糖分の摂取過多になる可能性があるため、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクがある人は、成分表示を確認しながら摂取することが望ましいです。
水:万能だが単体では不十分な場合も
水は最も基本的で重要な飲料ですが、電解質を含まないため、汗を大量にかいた後の補給には不十分な場合があります。大量発汗後に水だけを摂取し続けると、血中ナトリウム濃度が低下し「低ナトリウム血症」に陥る危険性があります。
そのため、軽度の活動や空調の効いた室内での水分補給には水で十分ですが、汗を多くかく状況では、他の選択肢との併用が必要です。
熱中症予防の“正しい飲み方”とは?
量とタイミングがポイント
熱中症を防ぐには、「喉が渇いた」と感じる前にこまめに水分を摂取することが重要です。一般的に、1時間ごとに100〜200ml程度の水分を目安に、気温や活動量に応じて調整しましょう。
また、朝起きた直後や入浴後、就寝前など、脱水が起こりやすいタイミングでの水分補給も効果的です。
汗とともに失われる“電解質”の補給を忘れずに
電解質の補給を怠ると、筋肉のけいれんや意識障害を引き起こすリスクがあります。とくに屋外作業やスポーツを行う際は、経口補水液やスポーツドリンクの活用が推奨されます。
シーン別のおすすめ飲料と飲み方
スポーツや屋外作業時
大量の発汗が予想されるシーンでは、開始30分前に経口補水液を飲むことで予防効果が高まります。作業中や運動中は15〜30分おきに100〜200mlを目安に補給しましょう。
オフィスや日常生活の中で
空調の効いた環境でも、知らないうちに脱水が進んでいることがあります。こまめな水またはカフェインを含まない飲料(麦茶など)での補給が理想的です。長時間の会議やデスクワーク中にも意識的に水分を摂る習慣をつけましょう。
高齢者や子どもなど、特に注意が必要な層には?
高齢者は喉の渇きに気付きにくく、子どもは体温調節機能が未発達です。家族や周囲の声かけによって、1日6〜8回程度の水分補給習慣を支援することが大切です。飲みやすいスポーツドリンクの薄めたものや、経口補水液を常備しておくと安心です。
健康経営の視点から考える熱中症対策
従業員の安全を守ることは企業価値を高めること
企業が熱中症対策を積極的に行うことは、労働災害の防止だけでなく、従業員のエンゲージメント向上や離職率の低下にもつながります。健康経営の一環として、正しい水分補給の啓発や、休憩時間の確保、空調設備の整備など、物理的・教育的な対策が求められます。
職場でできる熱中症対策の例
- 経口補水液やスポーツドリンクの常備
- 作業現場での熱中症リスク表示と対策ポスター
- WBGT値(暑さ指数)のモニタリング
- 毎日の健康チェック(体温・体調確認など)
これらの対策は、現場での安全意識を高めるとともに、組織としての信頼性を高めるものです
まとめ ~熱中症を“正しい飲み方”で防ぐ~
「とにかくたくさん水を飲めばいい」では、熱中症は予防できません。大切なのは、状況に応じた適切な飲料を、適切なタイミングと量で摂取することです。
特に、香椎地域をはじめとする都市部の企業や施設では、職場環境の変化や多様な従業員への対応が求められます。私たち産業医は、科学的な根拠に基づいた熱中症予防の啓発を通じて、企業と従業員の健康を守るサポートを行ってまいります。
株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス
弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
- 2021年8月 エターナルフィット西町南 開業
- 2022年11月 エターナルフィット厚別 開業
- 2024年7月 エターナルフィット円山 開業
- 救急科専門医
- 産業衛生専攻医
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医
- 脳血管内治療専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 産業医
- 労働衛生コンサルタント
- 健康経営エキスパートアドバイザー
- 健康運動指導士
- 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)
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