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「気温より危険」湿度と熱中症の関係とは?WBGT値の正しい見方と使い方

熱中症、湿度

夏場になると毎年のように話題となる「熱中症」。その原因として真っ先に挙げられるのは「高温」ですが、実はそれ以上に重要なのが「湿度」です。この記事では、産業医の視点から湿度と熱中症の深い関係を紐解き、さらに熱中症リスクを評価するための指標「WBGT(暑さ指数)」の正しい見方と使い方を解説します。

気温だけでは分からない!熱中症の本当のリスク

気温が高い日には熱中症リスクが高まるというのは一般的な理解ですが、実際には「気温×湿度×輻射熱(放射熱)」の三要素が複合的に影響しています。特に湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体温がうまく下がらないため、体内に熱がこもりやすくなります。

このため、同じ気温でも湿度が高ければ高いほど熱中症のリスクは急上昇します。

WBGTとは?湿度が支配する暑さ指数

WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、熱中症予防のために国際的に使用されている指標で、日本でも環境省や日本スポーツ協会、厚生労働省などが推奨しています。

WBGTの計算式

  • 屋外(直射日光あり):WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
  • 屋内(直射日光なし):WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度

湿球温度とは、空気中の水分量を反映する温度で、これがWBGTに70%の重みで影響を与えています。つまり、WBGTの数値は湿度に大きく左右されるのです。

「気温34℃・湿度42%」よりも「気温33℃・湿度54%」が危険!?

ある統計データによれば、

  • 気温34.8℃・湿度42%・WBGT28.6℃ → 熱中症搬送者数:56名
  • 気温33.2℃・湿度54%・WBGT30.2℃ → 熱中症搬送者数:100名

と、わずか1.6℃気温が低くても湿度の差でWBGTが高くなり、結果として搬送者が倍近くに達した例もあります。これは、湿度の影響がいかに大きいかを如実に示しています。

WBGTの危険度と目安:28℃が分水嶺

WBGT値(℃)危険度推奨される行動例
31以上危険激しい運動中止、屋内避難
28〜31厳重警戒頻回の休憩と水分・塩分補給
25〜28警戒運動時のこまめな休憩が必要
25未満注意体調不良時は無理を避ける

特にWBGTが28℃を超えると熱中症搬送リスクが急増することが多くの統計から明らかになっています。

どうやってWBGTを測る?〜産業医としての提言〜

WBGTを正確に測定するためには、専用の熱中症指数計が必要です。気温と湿度だけを測る簡易計測器では正確なWBGTは得られません。また、測定環境によっても数値に差が出るため、次の点に注意が必要です:

  • 測定器は直射日光を避けて設置
  • 自然通風環境で測定(強制通風との数値差あり)
  • 測定時間帯は日中の最も暑い時間(12〜15時)に重点を

職場・学校・スポーツ現場での活用法

● 職場(工事現場・屋外作業)

厚労省はWBGT値に応じた作業制限や休憩基準を提示しており、28℃以上では作業負荷に応じて休憩を義務付け、31℃を超える場合は原則作業を中止としています。

● 学校・スポーツ活動

日本スポーツ協会のガイドラインでは、WBGTが28℃を超えると運動中止を検討すべきとされ、31℃以上では原則運動禁止としています。

● 一般家庭・高齢者施設

WBGTは家庭内でも熱中症予防に有用です。特に高齢者は体温調節機能が低下しているため、WBGTを参考にエアコンや除湿機を適切に活用することが重要です。

まとめ ~熱中症対策は「湿度」と「WBGT」で決まる~

  • 気温よりも湿度が熱中症のリスクを大きく左右する
  • WBGTは湿度の影響を強く受ける指標で、28℃が重要な分岐点
  • 職場・学校・家庭でWBGTを活用し、正しい熱中症対策を

企業や団体では、WBGTの定期的な測定と記録、基準に基づいた活動制限ルールの策定が重要です。産業医としては、作業環境の評価や教育啓発の一環として、WBGTの導入とその活用を積極的に支援していきます。

株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平
野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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