目次
はじめに
2015年より、労働安全衛生法により従業員50名以上の事業場では、年1回以上のストレスチェックの実施が義務付けられています。これにより、職場におけるメンタルヘルス対策の強化が進められてきました。
そして2025年5月、改正労働安全衛生法が公布され、従業員50名未満の事業場に対しても、2028年5月までにストレスチェックの義務化が予定されています。企業規模を問わず、全事業者にとって「未実施のリスクと罰則」を理解することが重要になっています。
本記事では、ストレスチェックを実施しないことで生じる法的リスクや罰則、企業の対応策について詳しく解説します。
ストレスチェック未実施による罰則とリスク
報告義務違反の罰則と具体例
従業員50名以上の事業場は、ストレスチェックを年1回以上実施した上で、その実施状況を労働基準監督署へ報告する義務があります。
この報告義務を怠った場合や虚偽の報告を行った場合、労働安全衛生法 第120条5項に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
実際に厚生労働省の監査報告において、数件の報告漏れや遅延が指摘されており、改善指導を受けた事業場も存在しています。意図的な虚偽報告は特に厳しく見られるため注意が必要です。
実施しなかった場合の法的リスク
現時点で、ストレスチェックを実施しなかったこと自体に対する罰金規定は存在しません。しかし、これは「罰則がないから実施しなくてよい」ということではありません。
未実施が発覚した場合、労働基準監督署から行政指導や改善命令が出されることがあり、命令を無視した場合には罰金に発展する可能性があるのです。
この点は企業にとって見過ごせないリスクであり、形骸的な運用では不十分です。
安全配慮義務違反がもたらす損害
さらに重大な問題として、ストレスチェック未実施により、従業員のメンタル不調が放置された場合、企業側が「安全配慮義務違反」として民事責任を問われることがあります。
面接指導や職場環境改善を怠ったことで、従業員がうつ病などを発症し、それが業務起因と判断された場合、企業に対して数百万円規模の損害賠償命令が出された判例もあります。
50名未満企業にも義務化?今後の流れとリスク
改正法のスケジュールと背景
2025年5月、労働安全衛生法の改正が公布され、3年以内(2028年5月まで)に従業員50名未満の事業場にもストレスチェックが義務化される見込みです。
政令により、地域や業種によって前倒しされる可能性もあるため、小規模事業者であっても早期の対応が求められます。
この改正の背景には、中小企業におけるメンタルヘルス対策の遅れや、労働災害の増加傾向が挙げられます。
小規模事業者が直面する今後のリスクとは
現時点(2025年7月)では、50名未満の企業に対する明確な罰則は示されていません。ただし、50万円以下の罰金が適用される可能性や、安全配慮義務違反による賠償リスクは十分に存在します。
特に、法改正後に事故やうつ病発症などの事例が発生した場合、未実施が不作為と見なされ、企業責任が問われる恐れがあります。
実務対応のポイントと注意事項
実施方法と手順
- 実施回数:年1回以上
- 方法:医師、保健師などによる実施。紙またはWebによる匿名式回答が基本
- 結果の扱い:個人の結果は直接本人に通知、会社は個人特定せずに集団分析を行う
報告義務(50名以上企業)
実施後、所定の様式にて労働基準監督署へ提出することが義務。未報告は罰金の対象。
面接指導と職場改善
高ストレス者から申出があった場合、医師の面接指導を提供する義務あり。
また、集団分析結果に基づき、職場環境改善を行うことが企業の責任とされています。これを怠ると、安全配慮義務違反となるリスクがあります。
個人情報保護
結果は機密として扱われ、上司や同僚に開示することは禁じられています。漏洩が発覚した場合、刑事罰の対象になる可能性もあるため、管理体制が重要です。
受けない従業員への対応
ストレスチェックの受検は強制ではなく、従業員の自由意思に基づくものです。
受検を拒否した従業員に対して不利益な扱いをすることは禁止されています。説明会や社内広報による周知徹底がカギとなります。
罰則・法的リスク
現在のポイントまとめ
対象企業 | 罰則 | リスク |
50名以上 | 未報告で50万円以下の罰金 | 行政指導・安全配慮義務違反による賠償 |
50名未満 | 現時点で罰則明示なし | 義務化予定、違反で損害賠償リスクも |
2025年改正法により、ストレスチェック制度は全企業に適用される流れが確定的です。企業規模を問わず、制度の理解と運用体制の整備が急務となります。
まとめ
2025年の法改正により、ストレスチェックの義務が中小企業にも拡大する見込みです。50名以上の企業では、未報告に対する50万円以下の罰金が科されるほか、未実施でも行政指導・改善命令の対象となり得ます。
さらに、面接指導や集団分析の不履行が「安全配慮義務違反」とされると、損害賠償責任が発生する可能性もあるため注意が必要です。
今後、50名未満企業に対しても罰則が導入される可能性があるため、早期の対応と正確な理解が重要です。企業は、単なる形式的な対応ではなく、従業員のメンタルヘルスを守るための実効的な運用を意識することが求められます。
株式会社NoLaBoが提供する産業保健サービス
弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
- 2021年8月 エターナルフィット西町南 開業
- 2022年11月 エターナルフィット厚別 開業
- 2024年7月 エターナルフィット円山 開業
- 救急科専門医
- 産業衛生専攻医
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医
- 脳血管内治療専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 産業医
- 労働衛生コンサルタント
- 健康経営エキスパートアドバイザー
- 健康運動指導士
- 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)
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