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WBGTとは?基本の理解から始めよう
WBGTとは「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略称で、人体が感じる暑さを総合的に評価する指標です。温度・湿度・輻射熱(太陽など)・風の影響を含めて算出され、熱中症リスクを判断するのに非常に有効です。
この指標は1950年代にアメリカ軍によって開発され、現在では世界中の労働現場やスポーツ現場で利用されています。日本でも厚生労働省が労働者の安全管理においてWBGTの活用を推奨しています。
ポイント:気温が同じでも湿度が高い場合や日差しが強い場合、WBGTは大きくなり、熱中症リスクが上がります。
正しいWBGT値の測り方と注意点
測定に必要な機器
WBGT値は専用の測定器(熱中症指数計やWBGTモニター)を用いて計測します。一般的な温湿度計では不十分です。

測定方法のポイント
- 測定器は直射日光の下に設置(屋外の場合)
- 地表から1.1〜1.5mの高さで測定(人間の胸元に近い高さ)
- 周囲に壁や機械があると反射熱で数値が変動するため、開けた場所に設置
また、測定器のキャリブレーション(校正)も定期的に必要です。数値が正確でなければ、対策も誤ったものになってしまいます。
WBGT値と熱中症の関係性を理解する
WBGT値が高くなるにつれて、熱中症リスクは飛躍的に上がります。以下は目安として使われるリスク評価です:
WBGT値 | 危険度 | 行動指針 |
~21℃ | 低リスク | 通常作業可能 |
21~25℃ | 注意 | 定期的な休憩を推奨 |
26~28℃ | 警戒 | 水分補給+作業時間制限 |
29~31℃ | 厳重警戒 | 作業中止の判断、頻繁な休憩が必要 |
32℃以上 | 危険 | 原則作業中止、安全確保を最優先 |

重要なのは、「数値を測って終わり」ではなく、「判断基準として活用すること」です。
また、高齢者・肥満体型・暑さに慣れていない人は、同じWBGTでも熱中症のリスクが高くなります。個別対応が求められます。
屋外作業現場での具体的なWBGT活用法
現場でのWBGT活用には次のような方法があります。
活用法1:作業スケジュールの調整
午前中の涼しい時間帯に集中作業を行い、午後の高WBGT時間帯は軽作業や休憩にあてる。
活用法2:作業員への「見える化」
測定器を現場の目立つ場所に設置し、誰もがWBGT値を確認できるようにする。色分け表示(青・黄・赤)も有効。
活用法3:現場責任者による判断ルールの導入
例:「WBGTが30℃を超えたら作業中断、屋根下で全員休憩」などの明文化されたルールを設ける。
このように現場全体でWBGTを「共通言語」にすることが、事故防止につながります。
WBGTを活かした熱中症予防の実践例と考察
実践例:建設現場のケース
とある建設会社では、朝礼時にWBGTを測定し、日中のスケジュールに反映させています。WBGTが28℃を超えたら15分ごとの水分補給タイムを導入。さらに塩飴・冷却スプレーの支給、空調服の支給なども行っています。
結果、熱中症の発症件数が昨年比で75%減少したという報告もあります。
大切なことはWBGTの「意識づけ」
結局のところ、どれだけ正確にWBGTを測っても、現場の人々がその意味を理解し、行動につなげなければ意味がありません。
つまりWBGTは「予測ツール」ではなく「行動トリガー」です。
現場に文化として根付かせることで、初めて安全対策が機能します。
まとめ
WBGTは、熱中症対策の強力な指標です。正しい機器で正確に測定し、現場全体で共有・運用することが、屋外作業者の安全を守る鍵となります。
「見える化」「スケジュール調整」「ルールの導入」など、具体的な行動へと落とし込むことで、WBGTは単なる数値から命を守るツールへと進化します。
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略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。
- 2021年8月 エターナルフィット西町南 開業
- 2022年11月 エターナルフィット厚別 開業
- 2024年7月 エターナルフィット円山 開業
- 救急科専門医
- 産業衛生専攻医
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医
- 脳血管内治療専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 産業医
- 労働衛生コンサルタント
- 健康経営エキスパートアドバイザー
- 健康運動指導士
- 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)
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