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産業医が解説|熱中症の正しい対策と職場での予防ポイント

熱中症 アイキャッチ

熱中症の基礎知識と発症メカニズム

熱中症は、高温多湿な環境下で体温調整がうまくできなくなり、体内の水分や塩分のバランスが崩れて発症します。産業医として現場で頻繁に耳にするのが「突然倒れた」「意識が朦朧としていた」という事例です。

これは体温が急激に上昇し、脳や臓器に負荷がかかった結果といえます。

熱中症は大きく以下の3段階に分類されます。

軽度(I度):めまい、立ちくらみ、大量の発汗

中度(II度):頭痛、吐き気、倦怠感、筋肉のけいれん

重度(III度):意識障害、けいれん、臓器障害

初期症状を見逃さず、早期に対応することが重症化を防ぐカギとなります。

職場における熱中症のリスクと実例

特に夏場の作業現場では、熱中症の発症リスクが非常に高まります。以下のようなシチュエーションが報告されています。

建設業:真夏の屋外作業中、30代男性が軽い脱水症状に気づかず作業を続け、搬送されるケース。

製造業(工場内):換気が不十分な空間での作業により、中年女性が気分不良を訴える。

オフィスワーク:冷房の効いている環境でも、こまめな水分補給を怠ったことで軽い熱中症の症状を訴える社員もいます。

どの職種であっても油断は禁物です。湿度が高い場所では、たとえ気温がそれほど高くなくても熱中症は発症します。

基本的な熱中症対策(服装、水分補給、環境管理など)

①服装の工夫

・吸湿速乾性のある素材を選ぶ

・帽子や冷却タオルの着用

・通気性の高い作業着

②水分・塩分補給

・こまめな水分摂取(30分〜1時間ごと)

・スポーツドリンクや経口補水液の活用

・塩タブレットの携帯

③環境管理

・作業場所のWBGT値(暑さ指数)の確認

・適切な休憩の導入(目安:1時間作業→15分休憩)

・扇風機・冷風機・エアコンの利用

これらの基本対策を職場全体で「ルール化」することが大切です。

業種別の具体的な予防対策(建設・製造・オフィス等)

建設現場

日除けテントや仮設ミストの設置

作業員同士の声かけルールの徹底

作業開始前の体調チェック(体温測定や問診)

製造業

作業フロアの温湿度管理(センサー導入)

空調設備の定期点検

休憩室の冷房完備と飲料の提供

オフィス

在宅勤務や時差出勤の活用

エアコン設定温度の管理(28℃以下推奨)

デスクワーク中でも1時間に1回の休憩と水分摂取の促進

「自分の身は自分で守る」という意識を育てる教育も、長期的な熱中症予防に繋がります。

熱中症が起きた時の対応と職場全体での再発防止策

万が一熱中症の疑いがある場合、以下のステップで対応しましょう。

①初期対応

.すぐに日陰や冷房の効いた場所に移動

・衣服を緩め、首・脇の下・太ももなどを冷却

・意識がある場合は水分と塩分を摂取させる

・意識がない、けいれんがある場合は即救急車を要請

②再発防止策

・定期的な熱中症研修の実施

・熱中症アラートの職場共有(スマホや掲示板)

・産業医による個別の健康相談やフィードバック

「経験から学び、仕組みに落とし込む」ことが重要です。

まとめ ~熱中症は「正しい知識」と「職場全体の意識」で防げる~

熱中症は誰でもかかるリスクがあり、軽視すると命に関わる危険もあります。特に働く現場では、一人ひとりが予防意識を持ち、職場全体でルールを作り実践することが鍵になります。

産業医として感じるのは、「予防の仕組みづくり」が最も有効な対策であるということです。熱中症を「特別な病気」とせず、日常業務の中に組み込んでいく発想が求められます。

参考資料 厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」

【産業医について】

弊社はメディカルフィットネス事業と産業保健サービスを主軸にし、「健康と運動を通してたくさんの人を幸せにする」ための事業展開をしております。
厚生労働省認定のメディカルフィットネスで医学的な運動食事指導を、産業医、産業看護職、リハ職などが一つのチームとなり顧問先企業をサポートする、日本で唯一の産業保健サービスが行える企業でございます。

【代表紹介】 野呂 昇平

野呂 昇平

略歴
2013年 旭川医科大学医学部医学科卒業、医師免許取得。
脳神経外科学、救急医学をベースに大学での臨床研究や多くの手術症例を経験。
より多くの人を幸せにするため2021年2月、株式会社NoLaBoを設立。

【各種資格】

  • 救急科専門医
  • 産業衛生専攻医
  • 脳神経外科専門医
  • 脳卒中専門医
  • 脳血管内治療専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 産業医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 健康経営エキスパートアドバイザー
  • 健康運動指導士
  • 公認パーソナルトレーナー(NSCA-CSCS/CPT)

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